日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルドゥク」の意味・わかりやすい解説
マルドゥク
まるどぅく
Marduk
古代バビロニアで尊崇された神で、『旧約聖書』の「エレミヤ書」50章二のメロダクはこれにあたる。当初は地方神であったらしいが、バビロン第一王朝の初め(前19世紀ごろ)に勢力を得て、それまでのシュメール起源の主神エンリルにとってかわった。ハムラビ王(前17世紀ごろ)の法典前文に知恵の神エア(シュメール名エンキ)の息子として現れており、また『エヌマ・エリシュ』は、マルドゥクに捧(ささ)げられた新年儀式用の賛歌であり、女神ティアマト征伐、人間および動植物の創造などのマルドゥクの業績が語られている。この神名はセム語、シュメール語での解釈も試みられているが確定的ではない。バビロンの神殿はエ・サグ・イラとよばれ、また、竜と投槍(なげやり)をシンボルとしており、天神としては木星をさした。
[矢島文夫]