安満宮山古墳(読み)あまみややまこふん

日本歴史地名大系 「安満宮山古墳」の解説

安満宮山古墳
あまみややまこふん

[現在地名]高槻市安満御所の町

標高一二五メートルの山塊南斜面の中腹に築造された古墳。平成九年(一九九七)に発掘調査が行われ、南北約二一メートル、東西二〇メートル以下の長方形墳とみられている。

墳丘埴輪葺石は認められず、尾根筋に直交して設けられた墓坑の規模は、東西約七・一メートル、南北約三・六メートルで、調査時の深さは約四〇センチであった。掘方の下端には石を充填した排水溝が巡っていた。墓坑中央には長さ五・六メートル、幅一・三メートル、深さ一・二メートルの木棺埋納坑が掘られていた。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「安満宮山古墳」の意味・わかりやすい解説

安満宮山古墳
あまみややまこふん

大阪府高槻(たかつき)市安満御所の町にある墳丘の低い方墳。1997年(平成9)に高槻市教育委員会によって調査された。墳丘は、山塊の南斜面の尾根上にあり、南北約23メートル、東西約16メートルの不整形な方墳状である。調査時にはわずかながら盛り土が確認された。埴輪(はにわ)、葺石(ふきいし)などの外表施設はない。墓壙(ぼこう)は、尾根筋に直交するように設けられ、規模は南北約3.5メートル、東西約7.5メートルである。墓壙内の四周には河原石と小さな割石を使った排水溝を巡らせている。木棺は、墓壙を一度埋めたあとに再度掘り直した木棺埋納壙ともよぶべきもののなかに安置された割竹形木棺である。遺物の出土状況や棺材の遺存から、長さ約5メートル、直径約0.8メートルと推定され、被葬者は頭位を東にして埋葬されたようである。

 副葬品は、舶載鏡5面、ガラス小玉1000点以上、鉄刀1、板状鉄斧(てっぷ)1、有袋鉄斧1、鎌1、鉇(やりがんな)3がある。このうち舶載鏡は2群に分かれて副葬されていて、1~3号鏡、4、5号鏡がそれぞれ積み重ねられた状態で被葬者の頭部付近に置かれていた。また、鉄器類は木棺西側の南側面にひとまとまりにして置かれていた。1号鏡は、三角縁吾作銘四神四獣(さんかくぶちごさくめいししんしじゅう)鏡で、面径が21.8センチメートルである。内区の図像環状乳神獣鏡系譜をひくもので三角縁神獣鏡としては初期の製品である。2号鏡は青龍三年銘方格規矩(ほうかくきく)四神鏡で、面径は17.4センチメートルである。同型鏡には、京都府・大田南5号墳出土鏡がある。3号鏡は三角縁天・王・日・月・吉獣文帯四神四獣鏡で、面径が22.5センチメートルである。同型鏡には兵庫県・安田古墳出土鏡などがある。4号鏡は斜縁二神二獣鏡で、面径が15.8センチメートルである。5号鏡は陳是作同向式神獣鏡で面径が17.6センチメートルである。通常のものと異なり、外区が鋸歯(きょし)文と波文の組合せで構成されているのが特徴的である。

 安満宮山古墳は、副葬品が青龍三年(235年)銘鏡と三角縁神獣鏡の初期の製品の組合せという意味で、前期古墳研究に多くの問題を提出した。

大塚初重新井 悟]

『高槻市教育委員会編・刊『安満宮山古墳』(1997)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android