宋紫石(読み)そうしせき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宋紫石」の意味・わかりやすい解説

宋紫石
そうしせき

[生]正徳5(1715).江戸
[没]安永9(1780).5.20. /天明6(1786).3.11. 江戸
江戸時代中期の長崎派画家。本姓は楠本,通称は幸八郎。字は君赫または霞亭,号は雪渓のちに雪湖。長崎へ出て熊斐 (ゆうひ) に沈南蘋 (しんなんぴん) の写生的花鳥画を学び,さらに来日した清の画家宋紫岩に師事し,宋紫石の漢名を用いて江戸で南蘋風の写生画を盛んにした。また平賀源内の『物類品隲 (ひんしつ) 』 (1763) に挿絵を描いたり,自著『古今画藪 (がそう) 』 (70) にヨンストン著『動物図譜』 (1660) からの写しを十数図描くなどした。主要作品『芭蕉小禽図』 (1765,浅草徳本寺) ,『獅子図』,著書『宋紫石画譜』など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宋紫石」の意味・わかりやすい解説

宋紫石
そうしせき
(1715―1786)

江戸中期の画家。本名は楠本幸八郎。字(あざな)は君赫(くんかく)また霞亭。号は雪渓のち雪湖。江戸の人。長崎に遊学し、熊斐(ゆうひ)から清(しん)人沈南蘋(しんなんぴん)譲りの写生的な花鳥画風を学ぶ。さらに来日中の清人宋紫岩(しがん)にも師事し、中国風に宋紫石と改名した。江戸の地に当代中国画の新風、とりわけ南蘋風を伝えた功績が大きく、また西洋画にも関心を示した。平賀源内と交友があり、博物の書『物類品隲(ぶつるいひんしつ)』(1763)に挿絵を提供した。代表作に『雨中鶏図』(1771・東京国立博物館)があり、著書に『古今画藪(がそう)』(1770)などがある。司馬江漢(こうかん)、酒井抱一(ほういつ)らに教え、子の宋紫山(しざん)、孫の宋紫岡(しこう)が画業を継いだ。墓は徳本寺(東京都台東(たいとう)区)にある。

小林 忠]

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朝日日本歴史人物事典 「宋紫石」の解説

宋紫石

没年:天明6.3.11(1786.4.9)
生年:正徳5(1715)
江戸中期の南蘋派の画家。本姓は楠本。字は君赫,または霞亭。通称幸八郎。雪渓,のちに雪湖と号した。江戸の人。中年,長崎に遊学して熊斐から沈南蘋の画法を学び,次いで来日中の清人宋紫岩にも師事して宋紫石と改名した。宝暦9(1759)年ごろ江戸に帰り,南蘋画風の紹介,普及に努めた。著に『宋紫石画譜』『古今画藪』,作品に「芭蕉小禽図」(浅草・徳本寺蔵),「富岳図」(大和文華館蔵)などがある。杉田玄白,平賀源内と交友し,西洋画にも興味を示した。子の紫山,孫の紫岡があとを継いでいる。弟子に土方稲嶺,岡岷山らがおり,また司馬江漢,酒井抱一,蠣崎波響も一時期,紫石に学ぶなど,江戸の画壇におよぼした影響は大きい。

(武田光一)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「宋紫石」の解説

宋紫石 そう-しせき

1715-1786 江戸時代中期の画家。
正徳(しょうとく)5年生まれ。長崎で熊代熊斐(くましろ-ゆうひ),宋紫岩(しがん)にまなび,師の姓を名のる。沈南蘋(しん-なんぴん)風の写生的な花鳥画を江戸にひろめた。平賀源内著「物類品隲(ひんしつ)」の挿絵をえがく。天明6年3月11日死去。72歳。江戸出身。本姓は楠本(くすもと)。字(あざな)は君赫。通称は幸八郎。別号に雪渓,雪湖,霞亭。編著に「古今画藪(がそう)」,作品に「雨中軍鶏図」など。

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世界大百科事典(旧版)内の宋紫石の言及

【長崎派】より

…(3)南蘋(なんぴん)派は,1731年(享保16)に渡来した沈銓(しんせん)(南蘋)にはじまる。精緻な花鳥画の画風は南蘋に直接師事した熊代熊斐(ゆうひ)(1693‐1772)の門下の鶴亭(?‐1785),宋紫石(1716‐80)により近畿や関東に伝わり,江戸後期の画壇に写実主義の風潮がひろまる契機となった。(4)南宗画(文人画)派も伊孚九(いふきゆう),費漢源,江稼圃(こうかほ)らの来日中国画人に負うところが多い。…

※「宋紫石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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