他国を付庸(ふよう)国vassal stateとして、その外交能力の主要な部分を国際的に代表する国家をいう。両国の関係は、通常、国家の一部が分離、独立する過程で生じ、一種の国際的後見であり、かつてのバルカン諸国(1856~78年のセルビア、ルーマニア、1878~1908年のブルガリア)、またはエジプトに対するトルコ帝国の支配(1840~1914)が、その先例である。その支配・服従の程度は、両国間の保護関係条約の内容または他国の反応により一定しないが、一般に、宗主国は、付庸国に対し自国の国内法を適用し、原則として、第三国との条約または戦争関係を付庸国に及ぼすなど、その対外関係について国際的に責任を負った。そのほか20世紀初頭にかけてイギリス、フランス、イタリア等が代表的な宗主国であったが、今日ではその実例がない。
[山本草二]
国際関係において,従属国の政治・外交に特殊な権限をもち,同時に保護する国家。前近代の東アジアの国際関係では,中国が周辺諸国の長に称号を与える冊封(さくほう)関係が結ばれ,宗主国と藩属国という君臣関係が成立。中国には,周辺の夷狄(いてき)である異民族に対し,みずからを文化的に優越した民族(中華)とみなす華夷(かい)思想があり,中国の皇帝が周辺の異民族を徳化し,礼と法の秩序を作ることを理想とした。宗属関係の具体的表現が朝貢である。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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