王者が冊書をもって諸侯を封建すること。〈さっぽう〉ともいう。後世ではたとえば清制の貴妃や親王,郡王,貝勒(ベイレ),公主,夫人等の任命をこの語で呼んだように,封侯身分と観念されるものの叙任を意味した。冊封の対象は内臣にとどまらず外族にも及び,倭の女王卑弥呼が曹魏朝から〈親魏倭王〉に封ぜられたり,足利義満,豊臣秀吉が明朝から〈日本国王〉に封ぜられたのも冊封の例になる。冊書は本来は竹簡を編綴した竹冊であったが,後世は玉冊や綾錦の類も使用された。
西嶋定生は,中華帝国と冊封された周辺諸国の国際関係を〈冊封体制〉の概念でとらえる説をとなえた。冊封された諸国の君主は,定期的朝貢,中国の要請に応ずる出兵,臣礼遵守等の義務を課されるとともに,外敵の侵略に際し中国の庇護を保証される関係に立つ。東アジア史において現実の軍事,外交,通商等の諸関係の外被として,冊封の存在と意義に注意を喚起したところに冊封体制論の貢献が認められよう。
執筆者:池田 温
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「さっぽう」とも。前近代,中国の皇帝が周辺諸国の君長に対し冊書(さくしょ)・称号を授け,国王に封じること。冊封によって生じる関係を冊封関係といい,中国と諸国とは宗主国と藩属国という君臣関係になる。宗属関係の具体的表現が朝貢で,藩属国の使節は中国皇帝に対して,土産の物を献上して君臣の礼をつくし,皇帝は回賜(かいし)として多くの返礼物を与え,大国の威徳を示した。中国には,自身を礼・法を体現した文化地域すなわち中華とし,周辺地域は文化を知らない夷狄(いてき)とみる華夷(かい)思想が古来からあり,中華の威徳を周辺諸国に及ぼすのが冊封関係であると考えられていた。諸国の王は,自身の地位の正統性を中国から認められることで,自国内の王権の強化・安定をはかろうとして冊封に応じた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…後世ではたとえば清制の貴妃や親王,郡王,貝勒(ベイレ),公主,夫人等の任命をこの語でよんだように,封侯身分と観念されるものの叙任を意味した。冊封の対象は内臣にとどまらず外族にも及び,倭の女王卑弥呼が曹魏朝から〈親魏倭王〉に封ぜられたり,足利義満,豊臣秀吉が明朝から〈日本国王〉に封ぜられたのも冊封の例になる。冊書は本来は竹簡を編綴した竹冊であったが,後世は玉冊や綾錦の類も使用された。…
…前燕は高句麗が大敗してもすぐ再起するのを恐れ,王母,王妃だけでなく,先王のしかばねまでもち帰った。その後高句麗は前燕に臣従したが,355年前燕は故国原王を冊封して,営州諸軍事・征東大将軍・営州刺史・楽浪公・高句麗王とした。この冊封は前燕が華北に進出するためのものであるが,中国王朝が外臣に内臣の称号を与えた最初のものであり,朝鮮諸国王が中国王朝より冊封を受ける始まりでもある。…
※「冊封」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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