家長権(読み)かちょうけん

精選版 日本国語大辞典 「家長権」の意味・読み・例文・類語

かちょう‐けん カチャウ‥【家長権】

〘名〙 おもに家父長制度の家族で、家長が家族を統率し、家産を管理する権限日本では、旧民法で認められていた戸主権がその一例とされる。古代ローマにみられるように、家族の生命財産をも絶対的に支配する強い権限をもったが、のち、親権夫権とに分化し、近代の家族において解消する。家父長権。〔改訂増補哲学字彙(1884)〕

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デジタル大辞泉 「家長権」の意味・読み・例文・類語

かちょう‐けん〔カチヤウ‐〕【家長権】

家族制度において、家長が持つ、家族の統制のための支配権旧民法戸主権はこの一形態。家父権。家父長権。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「家長権」の意味・わかりやすい解説

家長権
かちょうけん

家族団体の長 (家父,家長) がその構成員に対し有した絶対的な支配権。家父長制をとる社会では,古今東西を問わず,いずこにおいても存在する制度であるが,特に古代ローマの家長権 patria potestasは,構成員の売却権や遺棄権,さらには生殺与奪権まで認められていたという点において,世界法史上最も特徴的である。旧来の中国では,家長は当家または当戸と呼ばれ,戸籍制度など公的関係では戸主といわれた。通例家族内で世代と年齢の高い男子があたり,家族共同体の指揮統率者であり,主婦の職分である日常の家事以外の家政または家務を担当した。家族は家長の手を通さずに任意に家産を処分したり,その同意を得ないで,家産の負担となるべき契約を締結することができなかった。しかし家族内の権力が,家長権と父権などに分立していることは,漢代以前からみられるところで,したがって家族生活において最も権威的なのは,家長が家族共同の父祖たる場合 (家父長) であったといえる。近代法は家長権を認めず,親権後見などが特別な理由によって認められるだけである。日本の民法では,昭和 22年法律 222号で廃止されるまで家長権の遺制として戸主権を認めていた。 (→父権制 )  

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百科事典マイペディア 「家長権」の意味・わかりやすい解説

家長権【かちょうけん】

家族の統率者が家族員に対してもつ支配的権利。その典型は古代ローマのパトリア・ポテスタース(patria potestas)に見出され,生殺権さえ家長に与えられていた。日本の民法旧規定では居所指定権などを内実とした戸主権がこれに当たる。
→関連項目親権

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世界大百科事典(旧版)内の家長権の言及

【家父長制】より

…ことに古代ローマでは,氏族が比較的早くその私法上の重要性を失い,家族が法的単位として現れ,そこでは家長が家構成員に対し絶対的権力を有し,また,家族の唯一の裁判上および裁判外の代表者として家長のみが完全な法的人格を有した。すなわち,家長は,その家に属し家長権manus∥patria potestasに服する妻,子,その妻,孫などに対し,その売却,質入,殺害の権限(生殺与奪の権jus vitae necisque)をも有し,家から離脱しないかぎり子などはその性別,年齢,婚姻の有無のいかんを問わずこれに服した。ただし,政治的権利については,成年男子である家子は軍事的役務を負うと同時に,民会での投票権および政務官就任権を認められていた。…

【ローマ】より

奴隷【島 創平】
【家族,教育,女性】
 ローマの家族familiaは,家長pater familias,家長の妻,息子夫婦,未婚の娘と息子の子,および奴隷たちからなっていた。家長は奴隷に対しては所有権,奴隷を除く家族に対しては家長権patria potestasをもっていた。十二表法にみられるように,家長には子どもを強制的に結婚させたり,養子に出したり,売却したりする権利,さらに生殺与奪の権利までも認められていた。…

※「家長権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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