導電材料(読み)どうでんざいりょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「導電材料」の意味・わかりやすい解説

導電材料
どうでんざいりょう

電力損失(あるいは電圧降下)の小さい状態で、電流を導くことを目的とした材料電線ケーブルの導体となる。電力損失は導体の電気抵抗に比例するので、導電材料は抵抗率が小さく、その逆数の導電率が大きいことが望ましい。さらに実用面からは、加工性、機械的性質、耐食性のほか、経済性も重要で、銅とアルミニウムおよびそれらの合金が広く使われている。

 銅は銀に次いで導電率が高く、加工が容易なうえに、機械的性質、耐食性も良好なため、導電材料としてはもっとも多く使われている。また電車への電力供給線(トロリー線)、機器用配線、電子部品のリード線など、機械的性質や耐熱性の改善が必要な場合には、銀、スズクロムニッケルジルコニウム、鉄、ケイ素などを少量加えた合金が用いられる。

 アルミニウムは、銅に対して導電率は約60%、引張り強さは約40%と低いが、密度は約3分の1であり、軽い。したがって銅線と同じ導体抵抗をもつアルミニウム電線では、直径は約1.3倍と増えるが、質量はほぼ半減する。この軽量の利点を生かし、中心部の鋼撚(よ)り線で強さを補った鋼心アルミ撚り線は、ほとんどすべての高圧架空送電線に採用されている。この場合、導電率をあまり低下させない範囲で、少量のジルコニウムを加えた耐熱合金マグネシウム、ケイ素、鉄、銅などを加えて強さを改善した合金も、純アルミニウムと同様に使われている。

 また銅と鋼、アルミニウムと鋼、銅とアルミニウム、ニッケルと銅を組み合わせた複合材や、銅、アルミニウムまたはそれらの合金線に貴金属はんだをめっきした材料も、それぞれの特徴を生かして、種々の用途に使われている。

[長沼義裕・大木義路]


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改訂新版 世界大百科事典 「導電材料」の意味・わかりやすい解説

導電材料 (どうでんざいりょう)
electric conductor

電気を種々の分野で利用するために,電流を特定の個所に伝え導くのに用いられる材料。電流をできるだけ小さい損失で伝える必要があるので,まず第1に電気抵抗率が小さいことが要求される。常温では銀が最も電気抵抗率が小さく,次いで銅,アルミニウムの順に大きくなる。銀は高価であるから接点材料のように少量で間に合う分野に使用されているだけである。したがって,現在は銅が導電材料として最も広く使用されている。銅はそのままでは強度が低いので,多くの場合,電気抵抗率があまり上昇しない程度に少量の合金元素を添加したうえで熱処理を施して使用する。送電線のように材料を大量使用する分野では,銅よりもはるかに安価なアルミニウム-マグネシウムなどのアルミニウム合金,鋼のより(撚)線を心線とした鋼線アルミより線(ACSR),また特殊な場合に鋼線にアルミニウムを被覆したアルミ被鋼線が用いられている。またナトリウムを配電線に利用する試みがなされたこともある。電気接点の材料としては,前述の銀以外に耐酸化性が最も優れている金およびその合金が重用されている。電気抵抗率の十分小さいものは現在のところ金属に限られているが,最近になって,ポリアセチレンの例のように,有機化合物にもかなり電気伝導性のよい物質が発見されており,今後の発展に期待がもたれる。ある種の金属は数K以下の極低温まで冷却すると電気抵抗率が0になる。この状態を超伝(電)導というが,超伝導状態では電流に伴うエネルギー損失が0で熱が発生しないので,非常に大きな電流を流すことができる。Nb-Ti合金,Nb3Snなどは超伝導遷移温度が高く,超伝導状態が消失する臨界磁場も大きいので,強大な磁場を発生するマグネットの材料として使用されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「導電材料」の意味・わかりやすい解説

導電材料
どうでんざいりょう
electric conductor

電気機器,送配電設備で,電気を通じるために使われる材料。銅,アルミニウムのような金属材料のほか,黒鉛,シリコンカーバイドのような半導体などがあり,その種類もきわめて多い。さらに使用目的で大きく分けると,(1) 電流の損失をより少くし,電流を能率よく流すための,いわゆる導電効率を目的とした導電用材料と,(2) 電熱線,抵抗体として用いられるもののように,電気抵抗が比較的大きいことを目的とした抵抗材料,(3) 抵抗が小さいことと同時に,耐摩耗性あるいは摺動性が必要とされる接点材料,ブラシ材料,(4) ヒューズ,フィラメント材料などの特殊目的に用いられる特殊導電材料などがある。なおプラスチックなどは,従来一般に電気の不良導体として知られてきたが,導電性をもったものが開発されている。

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