少女小説(読み)ショウジョショウセツ

デジタル大辞泉 「少女小説」の意味・読み・例文・類語

しょうじょ‐しょうせつ〔セウヂヨセウセツ〕【少女小説】

少女対象として書かれた小説。少女向けの小説。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「少女小説」の意味・わかりやすい解説

少女小説
しょうじょしょうせつ

児童文学の一ジャンル。児童文学を文学的児童文学と大衆的児童文学に大別した場合、後者に属し、とくに少女を読者対象に書かれた作品群をいう。少女小説は、歴史的には、前近代的モラルや生き方を要求された少女を主人公に、少女読者特有の好みであるセンチメンタリズムに彩られ、独自の内容と世界をつくりあげた。初め北田薄氷(うすらひ)らにより『少年世界』などの少年雑誌に掲載されていたが、『少女界』(1902)、『日本の少女』(1905)、『少女世界』(1906)、『少女の友』(1908)など相次ぐ少女雑誌の創刊により、隆盛の道を歩み始めた。吉屋信子(よしやのぶこ)の『花物語』が『少女画報』に発表されたのは1916年(大正5)であった。少女小説の最高傑作といわれるこの作品は、短編連作形式で、一輪の花に託して、青春前期の少女たち特有の繊細さと、優しさと、感傷性をない交ぜにして、特殊な感覚的少女の世界を描いて大人気を博した。吉屋信子は、その後も『七本椿(つばき)』『紅雀(べにすずめ)』『からたちの花』など数多くの少女小説を発表し、代表的作家となった。そのほか、『嵐(あらし)の小夜曲(セレナード)』(1930)の横山美智子(みちこ)、『絹糸草履(ぞうり)』(1931)の北川千代をはじめとして、徳永寿美子(すみこ)、由利聖子(ゆりせいこ)、平井晩村(ばんそん)、長田幹彦(ながたみきひこ)、西条八十(やそ)らが、少女小説独自の華麗な世界を展開した。

 第二次世界大戦以後は、『少女フレンド』(1962)、『マーガレット』(1963)など少女漫画週刊誌が創刊され、少女小説は台頭したコミックのなかに吸収されていった。その間、吉田としは『あした真奈(まな)は』(1964)、『愛のかたち』(1969)などの作品を発表し、多くの読者を得た。現在は、ジュニア小説として形をとどめてはいるものの、全体的には力がなく、青春小説の富島健夫(たけお)や、ユーモア・ミステリーのジャンルで赤川次郎、辻真先(つじまさき)らが固有の読者をつかんでいる。

[二上洋一]

『加太こうじ・上笙一郎編『児童文学への招待』(1965・南北社)』『渋沢青花著『大正の「日本少年」と「少女の友」』(1981・千人社)』

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