少糖(読み)しょうとう(その他表記)oligosaccharide

翻訳|oligosaccharide

日本大百科全書(ニッポニカ) 「少糖」の意味・わかりやすい解説

少糖
しょうとう
oligosaccharide

単糖が2~十数個脱水結合(脱水縮合)した糖質の総称。オリゴ糖(oligo-は少ない、欠乏の意味を表す接頭語)、寡糖ともいう。多糖類との境界はかならずしも明確ではない。遊離の状態のオリゴ糖の大部分は植物界に分布しており、二糖類としてはスクロース(ショ糖、砂糖、サッカロースともいう。グルコース(ブドウ糖ともいう)とフルクトース(果糖ともいう)からなる)、三糖類としてはラフィノース(ビート糖蜜、ダイズ、ユーカリ樹液などに含まれている。フルクトース、グルコース、ガラクトースからなる)、四糖類としてスタキオースチョロギの根、ダイズなどに含まれている。フルクトース1個、グルコース1個、ガラクトース2個からなる)などがあり、貯蔵物質としての役割を果たしている。真菌類、昆虫などには二糖類であるトレハロース(グルコース2分子からなる。両方のグルコースの1番目の炭素のところで脱水結合している)が存在する。動物界では乳に含まれる二糖類としてラクトース(乳糖ともいう。ガラクトースとグルコースからなる)や、シアリルラクトースなどのシアリルオリゴ糖(非還元末端にシアル酸をもつオリゴ糖)が存在する。また、代謝産物としてはデンプンの消化により生じたマルトース麦芽糖ともいう。グルコース2分子からなる。一方のグルコースの1番目の炭素と、他方のグルコースの4番目も炭素のところで脱水結合している)や尿中の種々のオリゴ糖がある。

 少糖は構成単糖の種類によりホモオリゴ糖(1種類の単糖からなるオリゴ糖)とヘテロオリゴ糖(2種類以上の単糖からなるオリゴ糖)に、結合様式により還元性少糖類と非還元性少糖類に分類される。複合糖質である糖タンパク質や糖脂質の構成成分である糖鎖は特異的な生理機能の発現に関与している。

 オリゴ糖のなかの難消化性オリゴ糖(ヒトの消化管で消化されにくいオリゴ糖)は小腸では消化吸収されず、大腸に到達して腸内細菌の栄養分となるため、ヒトに良い影響を与える腸内細菌を増やすとして注目され、次のようなものが商品化されている。

(1)ラフィノース(サトウダイコンから抽出)
(2)大豆オリゴ糖(ダイズから抽出。ラフィノースとスタキオースの混合物)
(3)フラクトオリゴ糖(タマネギ、アスパラガスなどに少量含まれる。グルコース1個とフルクトース2~4個からなる。砂糖から合成)
(4)ラクトスクロース(乳果オリゴ糖ともいう。ガラクトースとグルコースとフルクトースからなる。乳糖と砂糖から合成)
(5)キシロオリゴ糖(タケノコに少量含まれる。キシロースからなる。トウモロコシの芯を加水分解してつくる)
(6)ガラクトオリゴ糖(ヨーグルト中に少量含まれる。グルコース1個とガラクトース1~5個からなる。乳糖から合成)
[徳久幸子]

『桜井直樹・山本良一・加藤陽治著『植物細胞壁と多糖類』(1991・培風館)』『光岡知足著『現代人に不可欠なオリゴ糖――腸内細菌研究の最先端データによる日常健康法』(1995・コスモの本)』『早川幸男・小林昭一編著『オリゴ糖の新知識』(1998・食品化学新聞社)』『日本生化学会編『基礎生化学実験法5 脂質・糖質・複合糖質』(2000・東京化学同人)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「少糖」の解説

少糖

 →オリゴ糖

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の少糖の言及

【炭水化物】より

…その多くは(CH2O)nで示される分子式をもち,あたかも炭素に水が結合しているかのような印象を与えるので炭水化物という名称が生じ,かつては含水炭素とも呼ばれた。炭水化物は単糖monosuccharide,少糖olygosuccharide,多糖polysuccharideおよびそれらの誘導体にほぼ大別される。少糖は単糖が2~20個程度,多糖はさらにそれ以上結合したものである。…

【糖】より

…もともとは天然の甘味成分に対して与えられた漠然たる用語であるため,場合により多少違った意味で用いられる。(1)もっとも厳密には糖類saccharideのうち水溶性で甘味をもつものの総称で,単糖と多くの少糖を含める。(2)糖類一般,つまり単糖,少糖,多糖を含める。…

※「少糖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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