改訂新版 世界大百科事典 「尹善道」の意味・わかりやすい解説
尹善道 (いんぜんどう)
Yun Sǒn-do
生没年:1587-1671
朝鮮,李朝の文臣,歌人。字は約而,号は孤山。海南の人。鳳林大君(孝宗)の師傅で官は礼曹参議に至る。憂国の志が強く,国政をほしいままにする権臣を弾劾したために何度も各地へ流配の憂目にあった。官界への意欲を断ち郷里の海南へ戻ったが,やがて南海の孤島,甫吉島に入って楽書斎と名づけた書斎を築き,読書と詩作を楽しみながら生涯を終えた。彼の文集《孤山遺稿》には,〈山中新曲〉〈山中続新曲〉などの題で時調34首と,独特の詩型による〈漁夫四時詞〉(40首)が収められている。李朝の歌壇で歌辞では鄭澈,時調では彼が最高峰である。鄭澈が開拓した詩語を彼はさらに広げて語韻の音楽性を歌の中で追求し,詩想は一貫して逃避的隠者の世界を描いている。
執筆者:金 思燁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報