山口勝弘(読み)ヤマグチカツヒロ

デジタル大辞泉 「山口勝弘」の意味・読み・例文・類語

やまぐち‐かつひろ【山口勝弘】

[1928~2018]前衛芸術家。東京の生まれ。武満徹らと実験工房結成し、その中心メンバーとして活動。アクリル樹脂素材とした彫刻で高い評価を獲得した。ビデオアートにも取り組み、メディアアート先駆者として世界的に活躍した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「山口勝弘」の意味・わかりやすい解説

山口勝弘
やまぐちかつひろ
(1928―2018)

メディア・アーティスト。東京生まれ。1951年(昭和26)、日本大学法学部法律学科卒業。大学在学中の1948年、抽象絵画を描き始めて作家活動を開始。大学を卒業した年に滝口修造北代省三(きただいしょうぞう)、武満徹(たけみつとおる)ら13人のメンバーによって「実験工房」を結成、音楽、演劇、舞踏、映像などジャンルを越えた活動を展開した。そのなかで山口は、独創的な構造と独自の光学原理に基づいた、絵画でも彫刻でもないガラスの立体作品「Vitrine」のシリーズ(初制作は1951年。命名者は滝口修造)を発表、高い評価を受けた。1960年代前半には布などを利用した立体彫刻、後半にはアクリル樹脂の光沢を視覚効果に利用した光の彫刻を発表するなど活動の幅を広げ、「日本前衛展」(1965、ニューヨーク近代美術館)、「国際彫刻展」(1967、グッゲンハイム美術館)へ出品し、国際的に認められる。1968年には、三木富雄菅井汲(すがいくみ)、高松次郎と並んでベネチアビエンナーレに日本館代表作家として参加、光の彫刻『KISS』を出品した。

 1970年代以降はビデオ・アートの制作に着手。『コンセプトリップ』(1972)、『未来庭園』(1981)、『銀河庭園』(1986)などの代表作を残す一方で、1977年にはビデオによる個展「ビデオラマ」(東京、大阪)を開催するなど、日本におけるビデオ・アートの草分けとしての実績を示した。その後もコンピュータ・アート、ホログラフィーキネティック・アートなど斬新なメディアを積極的に取り入れた作品を発表。

 また1970年の日本万国博覧会では「三井グループ館」の総合プロデューサーを務め、1981年の神戸ポートピアでは国際ビデオ・アート展の開催を組織するなどプロデューサーとしても活躍。

 山口のメディア・アートの特徴としては、単にテクノロジーを礼賛するのではなく、建築デザインや庭園への関心に基づく周囲の環境への配慮が絶えず含まれていることがあげられる。海外ではパリ市立近代美術館、パリ・ユネスコホール、カーディフ文化センター(イギリス、ウェールズ)、アントウェルペン現代美術館(オランダ)、ブエノス・アイレス国立美術館などで作品が紹介されているほか、国内では1996年(平成8)に東京・練馬区立美術館で個展が開催された。

 1977~1992年、筑波大学教授。在職中に芸術研究科長、芸術学系長、芸術学群長を歴任、その後同大名誉教授。1992~2000年、神戸芸術工科大学教授、その後同大名誉教授。1985年ロカルノ国際ビデオ・アート・フェスティバル(スイス)で「黄金のレーザー賞」、1993年同フェスティバルでマルチメディア・パフォーマンス部門グランプリ、2000年毎日芸術賞受賞など受賞歴も多い。著書には『不定形美術ろん』(1967)、『環境芸術家キースラー』『ロボット・アヴァンギャルド』(ともに1978)、『映像空間創造』(1987)、『メディア時代の天神祭』(1992)などがある。

[暮沢剛巳 2018年5月21日]

『『不定形美術ろん』(1967・学芸書林)』『『環境芸術家キースラー』(1978・美術出版社)』『『ロボット・アヴァンギャルド』(1978・Parco出版局)』『『映像空間創造』(1987・美術出版社)』『『メディア時代の天神祭』(1992・美術出版社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「山口勝弘」の意味・わかりやすい解説

山口勝弘
やまぐちかつひろ

[生]1928.4.22. 東京,東京
[没]2018.5.2. 神奈川,横浜
芸術家。日本大学在学中の 1948年に美術講習会に参加し,トリダン(七耀会)を結成。1951年,美術や音楽の表現者を中心にグループ「実験工房」を結成,舞台構成や映像作品などを共同制作で発表した。その後,グリッド状の凹凸ガラスを前面にはめた箱型の絵画「ヴィトリーヌ」をはじめ,アクリル樹脂,光,金網,布といった異素材を用いて展示空間と鑑賞者を包括する「環境芸術」を提示。1968年のベネチア・ビエンナーレなど国際展でも評価を受け,1970年の日本万国博覧会では三井グループ館の総合プロデューサーを務めた。1972年結成の「ビデオひろば」や 1982年結成の「アール・ジュニ」などを通してビデオやハイテクノロジーを用いた双方向的な表現を追求し,メディアアートの第一人者として国内外で活動。『環境芸術家キースラー』などの評論・著述,筑波大学と神戸芸術工科大学での教育にも業績を残す。2001年毎日芸術賞ほか受賞多数。

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百科事典マイペディア 「山口勝弘」の意味・わかりやすい解説

山口勝弘【やまぐちかつひろ】

美術家。東京生れ。日大卒。1951年実験工房の結成に参加。ガラス板を重ねた《ビトリーヌ》をはじめ,多様な素材を使用し,一貫して実験的な造形に取り組む。1970年代初頭からはビデオと立体を組み合せた作品を発表。1977年―1992年筑波大学教授。著書に《フレデリック・キースラー》他多数。作品集《山口勝弘360°》がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「山口勝弘」の解説

山口勝弘 やまぐち-かつひろ

1928- 昭和後期-平成時代の美術家。
昭和3年4月22日生まれ。昭和26年武満徹らと実験工房を結成。音楽,演劇,映像などのメディアと関連した前衛的な造形にとりくむ。ライトアート,キネティックアートを手がけ,とくにビデオアートの先駆者として国際的に知られる。52年筑波大教授,平成4年神戸芸術工科大教授。東京出身。日大法学部卒。

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