岡康砧(読み)オカヤスギヌタ

デジタル大辞泉 「岡康砧」の意味・読み・例文・類語

おかやすぎぬた〔をかやすぎぬた〕【岡康砧/岡安砧】

箏曲そうきょく山田流手事物作曲者不明。一説に、享保・元文年間(1716~1741)に岡安小三郎が作曲したという。胡弓こきゅうの曲に編曲されて伝えられ、明治20年ごろ、山室保嘉箏曲として復活

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精選版 日本国語大辞典 「岡康砧」の意味・読み・例文・類語

おかやすぎぬたをかやすぎぬた【岡康砧】

  1. 箏曲(そうきょく)。山田流。手事物。作曲者不明。一説に、享保・元文年間(一七一六‐四一)に岡安小三郎が作曲したという。胡弓(こきゅう)の曲に編曲されて伝えられ、明治二〇年(一八八七)頃、山室保嘉が箏曲として復活。長い手事が秋を抒情的に表現する。

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改訂新版 世界大百科事典 「岡康砧」の意味・わかりやすい解説

岡康砧/岡安砧 (おかやすぎぬた)

長唄曲名および山田流箏曲名。長唄としては,2世岡安源助作曲の秘曲《擣衣きぬた)》の俗称。岡安家には《月前の擣衣》が伝えられていたとされるが,現行の《月前の砧》は3世杵屋(きねや)正治郎が1854年(安政1)作曲したもので別曲。原曲の作曲については諸説あり,いずれも信じがたい。長唄との関係も不明。酒井抱一(1828没)筆《吾妻唄》に,山田流箏曲としての曲名が初出。ただし,現行曲は藤植(ふじえ)流胡弓奥組本曲を,山田流箏曲家で藤植流胡弓の家元であった山室保嘉が,19世紀末(明治20年代)に箏曲に移曲し,3世山勢松韻などが世に広めたもの。今井慶松の編曲や,中能島欣一の替手(かえで)の作曲がある。歌詞は,箏組歌《菜蕗ふき)》の第3歌を原拠とした短いもので,砧の音を象徴したさまざまの音型を用いた手事が中心となる。最初の方の中心旋律は,長唄《秋色種(いろくさ)》や《喜三(きみ)の庭》にとり入れられていて有名。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「岡康砧」の意味・わかりやすい解説

岡康砧
おかやすきぬた

箏曲(そうきょく)の曲名。原曲の作曲者については諸説あってさだかでない。山田流の場合、現行曲は、藤植(ふじえ)流の胡弓(こきゅう)曲を明治20年代に山室保嘉(やすよし)が中心になって箏曲に作曲したものである。夜半に、遠くから聞こえてくる砧(きぬた)を打つ音が、時雨(しぐれ)の雨音と重なり、なんともいえぬ情趣を醸し出すようすを歌う。手事(てごと)とよばれる長い間奏部分に、テンレンテンレンと砧を打つリズムが規則的に現れ、替手の箏がバリエーションのリズムを刻む。箏の器楽的可能性を追求した作品といえよう。

[茂手木潔子]

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百科事典マイペディア 「岡康砧」の意味・わかりやすい解説

岡康砧【おかやすぎぬた】

山田流箏曲の曲名。原曲の作曲には諸説があって判然としない。文政11年以前には山田流箏曲として行われていた可能性もあるが,現行のものは,藤植流胡弓本曲を明治20年代に山室保嘉らが胡弓入りの箏・三弦合奏曲としたもの。現在では胡弓なしで,場合によっては尺八入りで演奏されることが多い。

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