改訂新版 世界大百科事典 「工数管理」の意味・わかりやすい解説
工数管理 (こうすうかんり)
〈工数〉すなわち作業の延べ所要時間の多少を検討し,その節減をはかる諸施策を立案,実施,評価することをいう。工数はたとえば,ある作業の遂行が5人の作業者の5時間労働を必要とする場合には,5人×5時間=25人時(man-hour)というように算定される。工数の多少の検討とは,具体的には,あらかじめ設定されている標準工数と実際にかかった実績工数とを比較し,その差異を把握することであり,それを基礎に工数節減が試みられる。
工数管理には次の2種類がある。第1は,実際の生産活動を行っている最中に,標準工数と実績工数との差異を把握し,その差異をできるかぎり少なくし,生産活動が円滑に進行しうるような調整方法を考案し,結果として工数を節減する方法である。これは余力管理ともいわれ,たとえば,実績工数が標準工数を上回り,生産に遅れが生じていることを把握した場合には,作業能率をアップするよう作業者に指示したり,あるいは時間外労働,応援などを行うことによって,生産の遅れをカバーする方法である。第2は,生産活動が一循環した後に,標準工数と実績工数とを比較し,差異が生じている場合にはその原因を究明し,それを排除する施策を立案し,それによって工数の節減をはかる方法である。これは,たとえば,作業研究を行って作業改善のための有効なデータを発見,利用して工数を節減する方法であり,第1の工数管理と比べ,より根本的で重要である。
執筆者:中村 圭介
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報