日本大百科全書(ニッポニカ) 「左官工事」の意味・わかりやすい解説
左官工事
さかんこうじ
モルタル、プラスターなどの水で練った塑性材料を下地に塗り付けて壁、床、天井などを仕上げる工事。こて塗りのほか、吹付け仕上げ、研(とぎ)仕上げ、洗い出し仕上げなどをも含む。
塗り仕上げ
土壁塗り、モルタル塗り(壁、床)、プラスター塗り(壁、天井)、コンクリートの直(じか)押さえなどがある。土壁は桃山時代から壁、築地(ついじ)塀などに用いられた。江戸時代に一般化した工法は、小割りした竹を縦横に細く配して縄で固定し、木舞(こまい)下地をつくる。これに土を塗り付けて乾燥したものを荒壁という。ついで中塗りを行い、その上に漆食(しっくい)などで仕上げ塗りをする。現在では手間のかかる土壁を用いることは少なくなってきた。モルタル塗りは、セメントと砂に水を加えて練り合わせたものをこてで塗り付ける。通常は下塗り、中塗り、上塗りの3回で仕上げるが、床部分には固練りのモルタルを使って一度に仕上げる。木造住宅の外壁は、板張りの上に防水紙と金網(メタルラスまたはワイヤラス)を張り、この上にモルタルを塗り付ける。コンクリートの床の仕上げに、打設したコンクリートが固まらないうちに左官工がこてで表面を仕上げる方法もある。これを直均(じかなら)しまたは直押さえという。また、水を混ぜた石膏(せっこう)を床に流すと自然に平らになる性質を利用したセルフレベリングモルタル塗りとよばれる方法もある。プラスター塗りは、石膏プラスターをこて塗りするもので、下地には、ラスボードとよばれる石膏を芯にして被覆成型しプラスターが付着しやすいように適当な間隔でくぼみをつけたボードが使用される。石膏プラスターはモルタルに比べて硬化が速く、収縮が少なく、また比較的薄く塗ることができるが、耐水性は劣る。通常、屋内の間仕切り壁や天井に施工される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
その他の仕上げ方法
以上、左官工事に分類される通常の塗り仕上げのほかに、次のような仕上げ方法がある。
色セメントなどをガンで吹き付ける方法も一般に用いられる。このほか代表的な化粧仕上げ工法としては、研仕上げ、洗い出し仕上げ、叩(たた)き仕上げ、石膏ボード乾式工法などがある。研仕上げは人造石研出しのことで、モルタルの下塗りの上に種石を水、セメントで調合したものをこてで押さえ塗りし、硬化後グラインダーで水研ぎを行う。洗い出し工法は、コンクリート打設後、表層のセメントモルタル部を洗い去って粗骨材を露出させる仕上げ工法である。また、叩き仕上げは、コンクリートの表層のモルタル部分および骨材の一部を槌(つち)状の工具でたたいて取り除き、凹凸のある肌面に化粧仕上げする工法である。石膏ボード乾式工法は、石膏ボードを壁、柱、梁(はり)に接着剤で張り付ける工法で、仕上げは塗装またはクロス張りによる。また、使用頻度は少ないが、合成樹脂塗り床、アスファルトモルタル塗りなども耐食の目的で使用される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]