市村羽左衛門(9代)(読み)いちむら・うざえもん

朝日日本歴史人物事典 「市村羽左衛門(9代)」の解説

市村羽左衛門(9代)

没年天明5.8.25(1785.9.28)
生年享保10(1725)
江戸中期の歌舞伎役者,市村座の座元。俳名家橘,屋号菊屋。市村家は,中村勘三郎家,森田勘弥家と共に代々座元を世襲,公許興行権と劇場を所有して役者たちの掌握をも行っていた。9代目というのは,市村家に興行権を譲った村山家を含めての代数で,市村家としては7代目。また羽(宇)左衛門という名義としては4代目に当たる。亀蔵の名で享保16(1731)年初舞台を踏む。宝暦12(1762)年,父8代目羽左衛門が没したため,襲名して跡を継いだ。しかし,天明4(1784)年,かさんだ借金のため市村座は興行不能となり,桐長桐を座元とする桐座に興行権を譲った。羽左衛門自身は翌年中村座で一世一代(引退興行)を勤め,その年没した。役者としては特に所作事に長じ,変化舞踊の名手として知られる。『芝居乗合話』(2代目中村重助著,寛政年間)によれば,大変覚えが悪かったが本番になるとすばらしかったという。<参考文献>国立劇場芸能調査室編『東都劇場沿革誌料』(歌舞伎資料選書6巻),『日本庶民文化史料集成』6巻

(池山晃)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「市村羽左衛門(9代)」の解説

市村羽左衛門(9代) いちむら-うざえもん

1725-1785 江戸時代中期の歌舞伎役者,座元。
享保(きょうほう)10年生まれ。8代市村羽左衛門の子。宝暦12年9代を襲名(名義4代目),江戸市村座の座元7代をつぐ。同座は借財がつもり天明4年に休座,興行権を桐(きり)座にゆずる。所作事(しょさごと)の名手といわれた。天明5年8月25日死去。61歳。初名は市村満蔵。前名は市村亀蔵(初代)。俳名は家橘(かきつ)。屋号は菊屋。

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