愛知県の南西部に位置する半島。西は伊勢湾に,東は三河湾西部の知多湾と衣浦(きぬうら)湾に面し,半島先端は渥美半島と相対する。東西5~14km,南北40kmの細長い半島で,先端部海上には篠(しの)島,日間賀(ひまか)島,佐久島などの小島が浮かぶ。野間~片名を結ぶ線以北は地形・地質的に尾張丘陵の延長部にあたり,第三紀の瀬戸累層に対比される常滑(とこなめ)累層がその主体をなしている。常滑累層は層厚数百mに及び,下部から基底レキ岩としての豊丘層(厚さ約60m),その上に粘土,シルト層と砂層の互層が重なる。標高は60~80mで,各所にバッドランドがみられる。野間~片名線以南の地質は,第一瀬戸内期に堆積した中新統の砂岩,ケツ岩の互層で,全般的にみて北へ向かって傾斜している。地形的には伊勢湾を前面とする傾動地塊の状態を呈し,内海(うつみ)海岸に近い高峰山(129m)は半島の最高点になっている。半田市付近および常滑市北部などの臨海部には,半田面と呼称される標高15~20mの洪積台地が断続的に分布しており,原面は比較的よく残されている。気候は年平均気温15~16℃,冬季平均気温4~6℃の比較的温暖な太平洋側気候であるが,雨量は年1400~1600mmと若干少ない。
零細な米作と野菜作が主体であった農業は,愛知用水が完成してからは半島全域が名古屋市の近郊農業圏となった。南知多町,美浜町などではミカン栽培が盛んになり,名古屋市の行楽圏として観光農業化も進んでいる。漁業は半島北部では工業化に伴い衰退したが,南部では従来の沿岸漁業に加えて,1960年代からノリ養殖が盛んになり,一部では釣船を出すなど観光漁業化がみられる。工業は西海岸では名古屋南部臨海工業地域が東海市,知多市を経て常滑市まで続き,東海岸では半田市を中心に自動車,車両などの輸送機械を主とした衣浦臨海工業地域が展開している。伝統産業も多く残され,常滑市では,付近に陶土を産することから常滑焼の古窯が多く,現在もタイル,衛生陶器,陶管など窯業が盛んである。また知多市,東浦町,半田市では知多木綿の名で知られる綿織物業,半田市では食酢,たまりなど醸造業などがある。半島南部には内海,野間,河和(こうわ),篠島,日間賀島など海水浴場や,釣りの適地が多い。
執筆者:溝口 常俊
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愛知県名古屋市南方、伊勢(いせ)湾に突出する南北に細長い半島。長さ40キロメートル、幅5~14キロメートル。先端沖に島嶼(とうしょ)群を散在させ、伊勢湾と三河湾を分ける。地形は「北低南高型」の丘陵で、標高は北部約40メートル、中部約70メートル、野間―河和(こうわ)を結ぶ以南の先端部は90~100メートルで南行するほど高くなっている。尾張(おわり)丘陵との間には大高―大府断層が走っている。地質は全般に新第三紀層で、中北部は常滑(とこなめ)層群、南部は師崎(もろざき)層群(砂岩、頁(けつ)岩)からなり、地層は北に傾斜し、先端部にはみごとな海食崖(がい)がみられる。地学上注目されている小佐(おざ)(南知多町)の「砂岩脈」は地震の際の液状化の化石ともいわれ、内海(うつみ)の「礫岩(つぶていわ)」一帯は領家(りょうけ)変成岩で海底地すべりの証左とされている。離島の日間賀(ひまか)島は師崎層群の砂岩・頁岩の互層、篠(しの)島は全島が花崗(かこう)岩からなっている。
気候は一般に温暖で年平均気温15℃内外、年降水量は1500ミリメートル内外で、かつては多数の溜池(ためいけ)群によって水田耕作が行われたが、愛知用水通水後は乏水性が解消された。沿岸部の中部以北には遠浅の海を埋め立てた名古屋南部、衣浦(きぬうら)両臨海工業地域が形成され、南部は海水浴場、観光ミカン園、釣りなどの観光地域になっている。
[伊藤郷平]
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…豊川河谷に沿って中央構造線が走るが,その南側の外帯には赤石山脈から続く弓張山地を経て,渥美半島の骨格をなす秩父古生層の山地が点在する。尾張の東部は鮮新・更新統からなる知多半島に続き,瀬戸陶土層,常滑ケツ岩層に多量に含まれる陶土は瀬戸,常滑の窯業地帯を支えている。濃尾平野(尾張平野)は面積約1800km2と関東平野に次ぐ日本で第2の平野であり,北から犬山を扇頂とした木曾川扇状地,自然堤防地帯,三角州低地と続く。…
…木曾川の水を濃尾平野東部の尾張丘陵と知多半島へ送る多目的用水。木曾川上流御嶽(おんたけ)山麓に建設した牧尾ダム(長野県王滝村,三岳村。…
※「知多半島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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