日本大百科全書(ニッポニカ) 「広域市町村圏」の意味・わかりやすい解説
広域市町村圏
こういきしちょうそんけん
1969年(昭和44)5月の新全国総合開発計画において、地域的な過密・過疎や地域格差の問題を解決するため、地方に広域生活圏を設定して、地域開発の基礎単位とすることが構想された。これを受けて自治省(現総務省)では同年10月その具体的方策として広域市町村圏の振興整備計画を打ち出した。「広域市町村圏」はつまり地方中核都市およびその周辺の農山漁村地域を一体として形成されている日常社会生活圏を行政の場として設定したもので、これを単位として地域社会の総合的振興整備を推進しようというものである。同年から大都市圏を除く地域に設定され、2000年(平成12)3月末現在340圏域となり、地方全域に及んでいる。広域市町村圏は、県知事が市町村と協議して、ほぼ人口10万以上を基準として適切な範囲をとって設定するが、圏内では全市町村が一部事務組合または協議会など広域行政機構を設置して広域市町村計画を策定し、圏内の道路、消防救急、上下水道、ごみ処理、公園、病院、福祉施設、体育施設、図書館、農業倉庫、集出荷所など遅れている事業や公共施設を共同で整備するが、これには国の補助金が交付されることとなっている。この計画に対して建設省(現国土交通省)にはほぼ同様の目的で「地方生活圏」計画があり、その地域割りもほとんど類似している。1977年(昭和52)の三全総(第三次全国総合開発計画)にうたわれている「定住圏」構想も類似のものである。なお、1994年の地方自治法改正にともなって、一部事務組合と類似するが、それよりも強力な行政組織として広域連合なるものを設置し、広域にわたる総合的な計画を作成して国や都道府県から直接、権限や事務の委任を受けることができるようになった。
[高野史男]
『自治省行政局編『広域市町村圏要覧』(1980・第一法規出版)』▽『朝日信夫・松浦正敬編著『新地方自治法講座Ⅰ 総則』(1997・ぎょうせい)』