鉄道、航空機、バスなど公共交通機関の座席を予約して、指定席券を発行するコンピュータを使ったシステムである。ここでは鉄道について記す。
日本の鉄道における指定券の発売は1900年(明治33)に寝台列車が初めて運転されたときにさかのぼることができる。当時は、始発駅のみの発売だった。本格的な指定券発売は、1950年(昭和25)10月の時刻改正にあわせ、国鉄(現JR)が特急列車に特別二等車(現在のグリーン車)を連結して、座席指定を行ったのが始まりである。指定券の発売は窓口の駅員によって、全国の拠点に設置された乗車券割当事務所との電話連絡で、発売台帳を確認しながら、手作業で行われた。
その後、列車数の増加に対応するため、国鉄は、コンピュータによるオンライン情報システムの先駆けである座席予約システム「マルス(MARS。Magnetic electric Automatic Reservation Systemの略)」を開発し、1960年2月に東京駅や上野駅などに設置した12台の端末が、東京乗車券割当事務所のコンピュータと結ばれた。最初は予約機能のみで、指定券の発券は駅で行っていた。1964年に運賃・料金の計算と自動発券機能を付加したマルス101形が稼動し、新幹線をはじめとする特急列車の大増発を可能にした。幾多の改良が重ねられ、現在ではホテルやレンタカーなどの予約機能も含めた、鉄道に関する総合的な販売システム(Multi Access Reservation System)であるマルス501形が、1日当り100万の指定席を処理している。さらに、プッシュホンやインターネットによる座席指定も可能となった。なお、JRでは座席予約の窓口を「みどりの窓口」とよんでいる。座席指定制有料特急を運行している私鉄もそれぞれの座席予約システムを開発、運用し、旅行会社のシステムと接続しているケースもある。
国外の鉄道でも、高速鉄道の普及と軌を一にして、同様のシステムが導入されている。それらのなかには、フランス国鉄(SNCF)の座席予約システム「ソクラテス(その後、発展型のレザラーユ2000を開発)」のように、曜日と時間帯によって、指定料金を変動させる機能をもつものもある。また、システムどうしの結合も行われ、多様なサービスが提供されている。
[佐藤芳彦]
『杉浦一機著『みどりの窓口を支える「マルス」の謎』(2005・草思社)』
輸送機関や宿泊施設などがあらかじめ予約確保されていることは,快適な旅行には必要であるが,一方,これらの機関や施設を効率よく利用するには,その予約確保の状態を一元的に管理する必要がある。航空機や列車の座席の予約は,かつては中央に置かれた座席予約台帳を,人手によって参照や記入することにより行われていたが,戦後航空機のジェット機化や新幹線の出現などにより,大量の座席の予約が必要になり,人手では対応できなくなった。そこで,1950年代に新技術として発展しつつあったコンピューターの高速な処理能力と大量な情報の蓄積と読み書きできる能力を用いて,座席の予約状態の情報を一元的に管理し,また,データ通信技術を用いて,各地に散在している予約受付窓口から端末装置の操作によって,直接この計算機に予約や解約などの処理を即時に行えるようなオンラインシステムが出現した。1953年にできたアメリカンエアラインズ社のMagnetronic reservisor systemが最初のシステムで,日本では60年の国鉄(現JR)のMARS-1と近畿日本鉄道のシステムが初めである。国鉄のシステムは,その後発展して〈緑の窓口〉システムとして,1日当り100万座席以上の予約をしている。現在,多くの航空機,列車の大規模な予約システムがあり,座席のほかに宿泊施設の予約,航空機では乗客名簿その他の座席以外の関連情報の処理も行われている。
執筆者:大野 豊
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