日本大百科全書(ニッポニカ) 「延売買」の意味・わかりやすい解説
延売買
のべばいばい
通常の商取引においては商品の受渡しとともに代金が決済されるが、信用取引が発達した江戸時代には、売買契約と商品受渡し、さらに代金決済との間に一定の時間的間隔を置くことが行われるようになった。これを延売(のべうり)・延買(のべかい)という。このような取引が発達すると、未決済のままで順次転売買することも可能になり、商人が投機を目的に行う空(から)売買をさす用語にもなった。江戸時代に、天下の台所として諸商品の集散地となった大坂では、信用制度の発達に伴い、ほとんどの取引にこの延売買がみられたが、金銀、米、油、綿、肥料、砂糖、乾物などではとくに延売買が多く、米、油、綿などでは取引市場として特別の会所を設立したところもある。
明治維新後は延取引、先物(さきもの)取引とよばれ、多く業者間で行われた。
[村井益男]