茶器の一種。茶席で茶碗(ちゃわん)を清めた湯や水を捨てる器。通称「こぼし」。古くは水覆、水翻、水下(みずこぼし)とも書いた。もともと台子皆具(だいすかいぐ)の一つとして、中に蓋置(ふたおき)を入れて飾った。素材は唐銅(からかね)であった。建水は大きく金属、陶磁、木竹の3種類に区別できるが、これは、建水が台子皆具から独立して用いられるようになってからのことである。主として金属は唐銅のほかに砂張(さはり)、毛織(モール)、七宝(しっぽう)、鍍金(ときん)、南鐐(なんりょう)、真鍮(しんちゅう)などが使われた。砂張には合子(ごうす)に優れたものがある。また陶磁には南蛮焼、ハンネラ、染付(そめつけ)、備前(びぜん)焼のほか、瀬戸焼、信楽(しがらき)焼、伊賀焼、丹波(たんば)焼、唐津(からつ)焼などがあり、その産地、形状とも多種多様である。木竹はいわゆる「曲(まげ)」といわれるもので、もっとも素朴で清浄感のある木地(きじ)曲のほか、塗曲、蒔絵(まきえ)、箔(はく)押しを施したもの、また竹や桜皮を周囲に張り巡らせたものもある。通常「七種建水」と称されるのは、大脇差(おおわきざし)、差替(さしかえ)、棒(ぼう)の先(さき)、鉄盥(かなだらい)、鎗(やり)の鞘(さや)、瓢箪(ひょうたん)、餌籮(えふご)の七つである。
[筒井紘一]
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