改訂新版 世界大百科事典 「建築密度」の意味・わかりやすい解説
建築密度 (けんちくみつど)
ある一定の土地に対する建築物の量の多少の程度を表す概念。建築面積率,建築容積率,戸数密度等の指標がある。建築面積率は建ぺい(蔽)率ともいい,建築面積の敷地面積に対する割合をいう。これは,建築物の面積と土地面積を組み合わせた指標の一つで,建築物の密集度を表す。ここで建築面積とは,建築物の外壁,またはこれに代わる柱の,中心線で囲まれた部分の水平投影面積のことである。なお,軒,ひさし,出窓など突出部の出が中心線より1mをこすときは,こえた部分は建築面積に加算される。建築物の用途と規模を法的に規制する都市計画法上の用途地域など地域地区制にもとづき,建築基準法では種々の建ぺい率制限が設定されている。例えば,(1)第1種および第2種の低層住居専用地域,第1種および第2種の中高層住居専用地域,工業専用地域内の建築物については,3/10,4/10,5/10,6/10のうち,当該地域の都市計画において定められた数値,(2)第1種および第2種の住居地域,準住居地域,準工業地域,工業地域内では6/10,(3)近隣商業地域,商業地域内では8/10,(4)用途地域の指定のない区域内では7/10以下というように定められている。そのほか防火地域の指定,構造の種別,敷地が角地である場合などによって,この建ぺい率制限が緩和されることがある。なお,建築面積の代りに敷地内の空地面積と敷地面積の比率をとれば空地面積率(空地率)となる。これは建築面積率とは建築面積率+空地面積率=100%の関係にある。
建築容積率は正確には建築延べ床面積率といい,単に容積率とも呼ばれる。建築物の延べ床面積の,敷地面積に対する割合である。延べ床面積とは建築物の各階の床面積の合計をいう。容積率は土地の高度集約利用の程度を表し,都市計画的にいうならば,一般に建ぺい率とは容積率=建ぺい率×平均階数の関係にある。なお,ここで平均階数とは,単体でいうならば,各階の床面積の合計を建築面積で割ったものになる。
戸数密度は単位土地面積に対する戸数で,建ぺい率,容積率とは次の関係にある。
容積率=戸数密度×1戸当り延べ床面積
建ぺい率=戸数密度×1戸当り建築面積
都市計画では,建築物の敷地面積に,道路や公園といった公的な土地も加えて容積率,建ぺい率を求めることがある(総(グロス)容積率,総(グロス)建ぺい率)。これに対して純粋に建築敷地面積のみを対象にしたものを,純(ネット)容積率,純(ネット)建ぺい率という。戸数密度はふつうha当りで示すが,1haはちょうど市街地を構成している平均的な街区に相当する大きさである。また,一定規模の土地において,人口密度と建築密度は相関する傾向にあり,前者が高くなれば後者も高くなる。これは,一定規模の宅地において人口密度を高くしようと思えば,建物の密集化や高層化が行われるからである。
執筆者:伊藤 滋+忠末 裕美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報