他人の物の効用を損なういわゆる毀棄罪(ききざい)にあたる行為のうち,文書毀棄罪にあたるものを除き,とくに重要な財産的価値をもつ建造物,艦船の損壊を,一般の器物損壊罪より重く処罰するもの。器物損壊罪と異なり,親告罪ではない。刑は5年以下の懲役(刑法260条)。建造物,艦船の損壊の結果,人を死傷させたときは,傷害罪の罪に比較して,重い刑で処断する(同条)。建造物とは,家屋その他これに類似する土地に定着した工作物をさす。初期段階を除き,建設中のものも含む。柱,壁,天井板など破壊しなければ取り外せない本体と一体をなす構成部分は本罪の客体であるが,窓ガラス,戸,畳など取外し可能なものは器物損壊罪の客体である。自分の物でも,差し押さえられているもの,質権など物権を設定しているもの,賃貸しているものなどは,他人の物と同じく扱われる(262条)。損壊は,物質的損傷であることを要せず,本来の用法・機能を阻害するほどの汚損なども含む。この点で,いかなる態様・程度のビラ貼りや落書きが本罪にあたるか,とくに労働争議との関連で最近問題となっている。合計4500枚のビラを,剝離するに格別の労力,時間,費用を要する方法で一面に貼りつけた事案につき,本罪の成立を認めた判例がある。〈暴力行為等処罰ニ関スル法律〉3条は,集団的方法による本罪の請託について特則を定める。
執筆者:伊東 研祐
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