楽器の音量を弱め音色を変えるための器具または装置。ミュートmute,ソルディーノsordino(イタリア語)ともいう。楽器に対して,随時簡単に着脱できるものが多い。弦楽器ではバイオリン族の弱音器が代表的で,櫛形の小片を駒にはさむ。弦から駒を経て胴に伝わる振動が抑制されて,こもった柔らかな音質に変わる。金管楽器にも徳利状,椀状などの弱音器があり,朝顔状開口に差し込んで用いる。曇った音になるもの,鋭い音になるものなど,種類により効果は一様でない。打楽器類には,普遍性のある弱音器は作られていないが,必要に応じて振動膜面にフェルト等をふれさせるとか,柔らかい桴頭(ばちがしら)を用いるとか,多様な工夫をこらす。ピアノの左ペダルとか,ハープシコードのリュート・ストップという機構なども,それぞれ弱音器に近い性格をもつといえよう。また近年,左右のペダルの中央に,騒音対策用の弱音ペダルを配したピアノもある(弦とハンマーの間にフェルトをはさむ)。ちなみに三味線の練習時の音量をおさえるために,忍駒(しのびごま)という特殊な駒を用いることがある。練習用の無音バイオリンも文献に記されている。
執筆者:白砂 昭一
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楽器の音量を抑制したり(例外あり)、音色を変えたりする装置。ミュートともいう。楽譜上では一般にイタリア語でcon sordino(弱音器をつけて)、senza sordino(弱音器を外して)と表記される。バイオリン属では、木、金属、象牙(ぞうげ)などでつくった櫛(くし)状の器具を駒(こま)の上にかぶせて音を柔らかくする。管楽器では一般に、管の朝顔の部分に木、金属、紙、布製などの器具を差し込む。金管で多用され、とくにトランペットやトロンボーンでは種類も多い。ホルンでは、器具はあまり用いず、右手を朝顔に挿入する奏法が常用されている。木管ではまれにしか用いられない。打楽器では、太鼓の膜面に布を置いたり、桴(ばち)にスポンジをつけたりして弱音にする。ピアノでは、ソフトペダル(左ペダル)を用いる。近年、アップライト(竪(たて)型)ピアノでは防音用にミュートペダル(中央のペダル)が加えられているが、通常の演奏には用いられない。なお、イタリア語のsordinoとドイツ語のDämpferはダンパー(消音)とミュート(弱音)の両方を意味するが、英語では両者を区別して用いる。
[川口明子]
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