役の行者(読み)エンノギョウジャ

デジタル大辞泉 「役の行者」の意味・読み・例文・類語

えん‐の‐ぎょうじゃ〔‐ギヤウジヤ〕【役の行者】

奈良時代の山岳修行者修験道の祖。大和国葛城山で修行し、吉野金峰山きんぶせん大峰山などに霊場を開いた。仏教に通じ、祈祷きとう・呪術などをよくしたが、文武天皇のとき、讒言ざんげんによって一時伊豆に流された。生没年未詳。役の優婆塞うばそく。役の小角しょうかく・おづの神変大菩薩しんぺんだいぼさつ
坪内逍遥つぼうちしょうよう戯曲。3幕。大正5年(1916)発表。役の行者がさまざまな危機に打ち勝ち、悟りを開く物語。大正15年(1926)3月に築地小劇場初演

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「役の行者」の意味・わかりやすい解説

役の行者
えんのぎょうじゃ

坪内逍遙(しょうよう)作の戯曲。三幕六場。1916年(大正5)9月『女魔神(おんなまじん)』と題して発表、翌年5月改訂して『役の行者』の題で刊行。ほかに、実演用に加筆した『行者と女魔』(1922)、映画向き絵巻物語『神変大菩薩伝(じんぺんだいぼさつでん)』(1932)がある。大和(やまと)国(奈良県)大峰(おおみね)山中に修行する役の行者は葛城山(かつらぎさん)の魔神一言主(ひとことぬし)を大クスノキのまたに呪縛(じゅばく)して旅に出る。弟子広足(ひろたり)は師の禁に背いて魔神に近づき、その魔力により心が動揺し、さらに一言主の母の魔女に誘惑されて行者のもとを去る。魔女はなおも美女の姿に変じ、帰山した行者を誘惑するが、行者は厳然と退ける。おりから朝廷から討手がかかり、自分のために老母の命が危ないのにも心を動かさず、ついに信念と行力によって大岩石を打ち砕いて金剛蔵王(こんごうざおう)の像を残し、白雲と化して去る。当時の自然主義に対する逍遙の批判と信念を具体化した作。1926年3月築地(つきじ)小劇場初の創作劇として小山内薫(おさないかおる)演出により上演された。

菊池 明]

『『現代日本戯曲選集4』(1955・白水社)』

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「役の行者」の解説

役の行者
えんのぎょうじゃ

歌舞伎浄瑠璃外題
作者
坪内逍遙
初演
大正15.3(東京・築地小劇場)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の役の行者の言及

【坪内逍遥】より

…1904年には《新曲浦島》を発表,新舞踊劇を提唱するが,翌々年,島村抱月を支援して文芸協会を興し,シェークスピア,イプセンなどを紹介して新劇運動の基礎を築いた。抱月と松井須磨子の恋愛問題で文芸協会が解散するにいたったいきさつは戯曲《役の行者》(1915)に投影されている。晩年はシェークスピアの翻訳に全力を傾注し,28年全40巻の全集を完成,死の直前までその改修につとめた。…

※「役の行者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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