日本大百科全書(ニッポニカ) 「御光」の意味・わかりやすい解説
御光
ごこう
山の頂上付近で、前方に霧があって太陽が背後にあるとき、前方の霧(または雲)の中に自分の影がぼんやりと映り、その周りに色のついた光の輪がかかる。これを御光といい、グローリーgloryともよばれる。御光は自分だけに見えて第三者は横からそれを見ることはできない。光の輪は外側が赤みがかり、内側が青みがかっている。光冠の色の配列と同じである。自分の影の周りは明るい白色のことが多いが、暗い色のこともある。御光の周り(外側)に大きな白い光輪(霧虹(きりにじ))が見えることもある。御光の光輪の直径が5度とすれば霧虹の直径は約67度である。御光は背後に太陽、前方に霧(または雲)があれば、どこでもいつでも見ることができる。山頂ではとくに見る機会が多い。光の輪が二重にできたり、多いときは五重に出ることもある。航空機上からも上に太陽があり下に雲があると御光が見えることは珍しくはない。雲中を飛行しているとき、前方の太陽の方向に光冠を見、同時に後方に御光を見たという例もある。
御光の仕組みはまだ明らかではない。太陽の方向に見える光冠を裏返しにしたようなもので、太陽の光が雲の中に入って雲粒に当たって散乱し、その光が途中の雲粒によって回折されてできるというように考えられている。
御光は普通、山でよく見られるので「山の御光」といわれる。昔は御光を御来迎(ごらいごう)とよんで山で修行する行者は神聖な現象とした。ドイツのブロッケン山では霧の中に自分の影が拡大されて大きく映るのが多く観測されたが、これは「ブロッケンの妖怪(ようかい)」とよばれる。その映像の周りに御光ができることもあり、その場合も「ブロッケンの妖怪」とよぶ。御光ということばはそのほかにもいろいろと使われ、裏御光、稲田の御光などはよく聞かれる。
[大田正次・股野宏志]