御来迎(読み)ゴライゴウ

デジタル大辞泉 「御来迎」の意味・読み・例文・類語

ご‐らいごう〔‐ライガウ〕【御来迎】

来迎」を敬っていう語。
高山頂上太陽を背にしたとき、前面の霧に自分の影が大きく映り、その周りに光環が見られる現象阿弥陀仏光背を負うて来迎するのになぞらえていう。御来光 夏》雪渓をさきだつ禰宜ねぎや―/爽雨」
江戸時代の玩具の名。紙の張り抜きや木・土で作った小さな仏の像を竹筒に納めておき、糸の仕掛けで竹筒を下げると、黄色の紙を畳んで作った後光が開き、仏の像が現れるもの。
御来光ごらいこう1」に同じ。
[類語]グローリーブロッケン現象かさ

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精選版 日本国語大辞典 「御来迎」の意味・読み・例文・類語

ご‐らいごう‥ライガウ【御来迎】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ごらいこう」とも。「ご」は接頭語 )
  2. 念仏行者臨終に、彌陀三尊などがあらわれる事を敬っていう語。
    1. [初出の実例]「十万億の彌陀仏も、三尊ここに御らいがう、紫雲たなびき、花降り、菩薩もげには御影向(やうがう)」(出典:仮名草子・恨の介(1609‐17頃)下)
  3. 玩具の一つ。紙、木、土などでつくった小さな仏像を竹筒の中に入れて、筒をさげると黄紙を畳んで作った後光が開き、仏像がせり出すように仕掛けたもの。元祿(一六八八‐一七〇四)頃から売られたが、明和期(一七六四‐七二)には仏像にかわって、赤紙に烏を描いたものが行なわれた。御来迎のからくり
    1. 御来迎<b>②</b>〈還魂紙料〉
      御来迎〈還魂紙料〉
    2. [初出の実例]「竹の中より光を出す、したい、ごらいかうは大坂のしだしでござる」(出典:浄瑠璃・博多露左衛門色伝授(1708)三)
  4. 高山で拝む日の出。また、日の出や日没の時に、太陽を背にして立つと、自分の影が前面の霧に映り、彌陀が光背を負って来迎するような形に見える現象。ブロッケン現象。グローリー。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「苗場山〈略〉しののめのそらまちわびしに、はれわたりたれば、いざや御来迎(ライカウ)を拝たまへと案内がいふにまかせ」(出典:随筆・北越雪譜(1836‐42)二)
  5. 二十六夜待(にじゅうろくやまち)の月の出。
    1. [初出の実例]「御来迎すんですぐさま床へ入」(出典:雑俳・柳多留‐四(1769))
  6. ( から転じて ) 人が来ることをからかっていう語。
    1. [初出の実例]「旦那、如何(どう)でげす、愈よ御来迎(ゴライコウ)に及んだじゃありませんか」(出典:初すがた(1900)〈小杉天外〉四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御来迎」の意味・わかりやすい解説

御来迎(玩具)
ごらいごう

江戸時代の玩具(がんぐ)。紙を畳んで、四角な張り抜き筒、または竹筒に収め、押し出せば仏の像が開いて後光を負ってせり出す仕掛け。7月26日の月を、三尊の御来迎(現れること)といって遙拝(ようはい)した当時の風習(六夜待(ろくやまち))を玩具化したもの。仏像は張り抜きまたは桐(きり)の木に彩色。円光背は黄色の紙製で、筒の下の棒を上下すると仏が出入りする。これを藁苞(わらづと)に挿し並べて「御来迎、御来迎」と売り歩いた。元禄(げんろく)年間(1688~1704)から安永(あんえい)年間(1772~81)の末まで約100年間も廃れずに流行したらしい。江戸・高輪(たかなわ)付近での六夜待を詠んだ川柳(せんりゅう)に、「御来迎三文ですまぬ海のはた」(安永)とあり、値段が当時3文であったことがわかる。なお明和(めいわ)年間(1764~72)の中ごろには、この仏像を烏(からす)にかえ、光背を赤い紙にした変わり型も現れたが、富士山の行者が日の出を御来迎とよんでいるのに基づいた着想と思われる。

[斎藤良輔]


御来迎(仏教)
ごらいごう

浄土に生まれ変わることを願う念仏行者などの臨終に際して、弥陀(みだ)三尊などの仏菩薩(ぼさつ)が迎えに現れることを敬っていう。「ごらいこう」ともいい、仏教美術の一様式としても重要な位置を占め、雲に乗った仏菩薩の背後には光背(御光(ごこう))が描かれている。転じて、高山などで見られるある状況下の日の出や、それに伴う神秘的な景観を、御来迎、御来光、御光などとよんで、拝む習慣もある。

[宇田敏彦]

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百科事典マイペディア 「御来迎」の意味・わかりやすい解説

御来迎【ごらいごう】

山頂付近で太陽を背にして雲や霧を見るとき,観測者の影が霧に投影され,顔の位置を中心として影全体をとりまいて見える美しい大きな光輪。微小水滴による光の回折現象で,水滴の大きさが均一のとき鮮明となる。観測者の影が著しく大きく見えるのは錯覚である。昔の人の信仰心から阿弥陀如来の御来迎と呼んだものであろう。仏の御光,山の御光ともいう。グローリーと同じ。なお高山で望む日の出の景観は御来光という。

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世界大百科事典(旧版)内の御来迎の言及

【富士信仰】より

…この登山風俗は,江戸時代にも引き継がれていて,富士講もまた宿坊とつながりをもっていた。登山者の信仰活動の目的は,山上で日の出を拝することで,これを御来迎または御来光と称した。さらに山中に胎内穴があり,聖地視され,この洞穴に入り出てくること(胎内くぐり)は,富士詣により再生することを潜在的に意味したらしい。…

※「御来迎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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