蒸留によって精製した水をとくにこのようによぶ。蒸留によらずイオン交換樹脂などを用いて,脱塩精製した水も蒸留水と同じように用いることがあり,日本薬局方では蒸留水とあわせて精製水purified waterとよんでいる。また純粋な水は電気抵抗が高く,溶液の導電率測定に用いることができる程度に精製したもの(電気抵抗1×106Ω・cm以上,通常の蒸留水は105Ω・cm程度)は伝導度水conductivity waterといっている。
水はきわめて多くの物質を溶かすため,普通の水,すなわち水道水,井戸水,雨水,河川・湖沼などの水は,各種の無機物あるいは有機物を溶かしていて,純粋な水ではないのが普通である。そのため化学における実験操作,医薬品製造などの際に,純粋な水を必要とするとき,通常の水を蒸留して精製した水を使用する。すなわち水道水,井戸水などを加熱,沸騰させ,発生する水蒸気を冷却して再び凝縮させて蒸留水とする。
蒸留水製造には各種の装置がくふうされているが,ガラス製のもの,金属製とくに銅製のものが普通に用いられている。ただし,ガラス製の装置ではガラスからいくぶんアルカリ成分が溶けてくるし,銅製では微量の銅が溶け出してくる。これを防ぐためには石英製,硬質ガラス製のものが用いられる。この場合には不純物の混入は少ない。また空気中で蒸留すると,空気中の塵埃(じんあい),二酸化炭素,空気などが溶け込む。これを避けるためには,1回蒸留した水に,少量の過マンガン酸カリウムを加え,硬質ガラスあるいは石英製容器を用いて再蒸留した再蒸留水が用いられる。純粋な水のpHは7であるが,空気中に放置すると空気中の二酸化炭素を溶かしてpH5.7の弱酸性となる。各種の製剤,試液,規定液,標準液の調製,各種の試験に用いられ,注射液には日本薬局方で規定された注射液用蒸留水が用いられる。飲用としてはならない。
執筆者:中原 勝儼
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蒸留によって精製した水。水は多くの物質を溶かしやすく、われわれの身の回りにある水、すなわち水道水、井戸水、河川水などは各種の有機物、無機物などを含んでいて純粋な水ではない。したがって化学的な操作や医薬品などとして純粋な水が必要なときは、水道水や井戸水などを加熱、沸騰させ、発生した水蒸気を冷却、凝縮させて蒸留水とする。
蒸留水をつくるのには各種の装置がくふうされている。ガラス製装置では微量のアルカリ、銅製では微量の銅などが混入してくるが、石英製のものでは不純物の混入が少ない。さらに空気中で蒸留すると、空気中の浮遊物が入り込むし、二酸化炭素や空気も溶け込んでくる。したがって精密な実験をするときには、1回蒸留した水に少量の過マンガン酸カリウムを加え、硬質ガラスあるいは石英容器中で再蒸留したものが用いられる。純粋な水の水素イオン濃度(pH)は7であり、これを平衡水というが、空気中に放置すると二酸化炭素を吸収して弱酸性のpH5.7程度となる。
イオン交換樹脂などを用いて精製した水を蒸留水と同じように用いることがあり、これらをあわせて精製水といっている。
[中原勝儼]
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水の中に含まれているコロイド状物質,溶存物質,その他,種々のきょう雑物を蒸留によって除去,精製した水.石英製の蒸留器で純度のよい水が得られる.普通,用いられる蒸留水は比抵抗5×105 Ω cm 程度のものであるが,蒸留を繰り返すとさらに純度のよい水が得られる.蒸留水は空気に触れると二酸化炭素を吸収して弱酸性(pH 約5.7)になる.各種薬品の調製,試験など多方面に用いられる.注射液にはとくに高圧蒸気滅菌した滅菌蒸留水が用いられる.[CAS 7732-18-5:H2O]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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