心ばせ（読み）こころばせ

精選版 日本国語大辞典

こころ‐ばせ【心ばせ】

〘名〙 (「心馳(は)せ」で、心の動く状態をいう)

① 性格や性質にもとづいた心の働き。人柄を示すような心の動き。

※竹取（９Ｃ末‐１０Ｃ初）「昔、山にて見つけたる。かかれば、心ばせも世の人に似ず侍る」

② 気骨ある心の働き。

※書紀（720）皇極三年正月（岩崎本訓）「軽皇子、深く中臣鎌子連の意気(ココロハセ)の高く逸れて容止犯れ難きことを識りて」

③ 才知、才覚、気転のほどを示すような心の働き。思慮分別のほどを示すような心の働き。しっかりした心の働き。

※源氏（1001‐14頃）手習「心ばせある少将の尼、左衛門とてあるおとなしき人、童ばかりぞとどめたりける」

④ 常日ごろの心がけを示すような心の働き。心構え。用意。たしなみ。

※源氏（1001‐14頃）夕顔「えうとみはつまじきさまもしたりしかな。何の心ばせありげもなく、さうどきほこりたりしよ」

※今昔（1120頃か）二八「心ばせ有る人そら、物に躓(つまづき)て倒(たふる)る事、常の事也」

⑤ 情趣を解する鋭敏な感覚。美的理解力を示すような心の働き。

※枕（１０Ｃ終）一八〇「そのころいたうすいたる者に言はれ、心ばせなどある人の、〈略〉名残思ひいでられんとことばをつくして出づるに」

⑥ 相手の身になって何かと心を働かせること。親切な配慮。心づかい。好意。

※古今（905‐914）物名・四五四「いささめに時まつまにぞ日はへぬる心ばせをば人に見えつつ〈紀乳母〉」

⑦ 事物や行動などに込められている、意義や趣旨。

※叢書本謡曲・梅（1765頃）「昔の髻華(うづ)の心ばせ、木(こ)の花の木を冠(かうむり)の、巾子(こじ)に添へ立て久方の、天の日蔭のかづら垂(し)で」

出典　精選版 日本国語大辞典