心臓奇形(読み)しんぞうきけい

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

心臓奇形
しんぞうきけい

生まれながら心臓の構造に異常があるものをいう。先天性心疾患のほとんどを占める。通常、心臓に隣接する胸部大動脈や肺動脈本幹の異常も含めて心臓奇形とよばれる。先天性の発生異常による心臓奇形には多くの種類がある。その発生頻度は1000人の出生に対して6~8人の割合で、頻度としては比較的高い値を示す。心臓奇形の発生原因は発育停止説、感染説、遺伝説など種々考えられているが、まだ完全には究明されていない。しかし、発育停止によっておこると解されるものが多く、動物実験では温度、酸素飽和度、栄養欠陥によって発育が停止し、奇形がおこることが証明されている。心臓は発生学的に心臓球、総心室、総心房ならびに静脈洞として形成され、心臓球に総動脈幹が接続する1個の管状原器であり、胎生第4週の終わりから旋回、捻転(ねんてん)、屈曲などの経過を経て発育するが、その発育機転障害によって種々の心臓奇形が発生する。その他の原因として妊娠初期のウイルス感染、ことに風疹(ふうしん)が重大な関係があるといわれている。ダウン症候群などの染色体異常や遺伝性疾患には心臓奇形を伴うものが多い。
 一般に乳幼児に発見される心疾患のほとんどが心臓奇形であり、幼時に見過ごされていて後年初めて気づかれることもある。なかには長く生命を維持するものもあるが、重症の場合は放置すれば乳児期に死亡することが多い。しかし、最近の心臓外科の進歩によって救命治癒せしめることが可能になってきた。心臓奇形は多くのものにおいて短絡(シャント)が存在する。そのうち、右→左短絡を有するものはチアノーゼ(青色症)を呈する。
 チアノーゼを示す疾患のうち、もっとも重要なものはファロー四徴症とよばれるもので、心室中隔欠損、肺動脈狭窄(きょうさく)、大動脈右方転位、右室肥大の4病変を伴う。発生頻度は先天性心疾患の10%前後であるが、チアノーゼ中では70%を占める。最近は外科治療の進歩で根治手術の成績がかなり向上している。放置すれば成人までに死亡する可能性が高い。また、大血管転位症は、正常位とは反対に大動脈が右心室から、肺動脈は左心室からそれぞれ出ているもので、中隔欠損、動脈管(ボタロー管)開存などを合併する重症奇形である。そのほか、両大血管右室起始症、総動脈幹症、総肺静脈還流異常、単心室症、三尖弁(さんせんべん)閉鎖症、エプスタイン病などがある。
 チアノーゼを示さないケースとしては中隔欠損症がもっとも多く、左右の心房の隔壁に孔(あな)のある心房中隔欠損症と、心室の中隔に孔のある心室中隔欠損症に分けられる。後者は先天性心疾患のなかでもっとも多く、20~25%を占めている。これに類するがさらに複雑なものに心内膜床欠損症がある。また心臓弁膜に関する問題では肺動脈弁狭窄症が比較的多く、大動脈弁狭窄症もある。動脈管開存症は発生頻度の高い疾患で、先天性心疾患の約15%を占める。胎児期に肺動脈と大動脈とを連絡していた動脈管が閉鎖しないで体循環―肺循環に短絡を生じたもの(動脈管の開存)である。大動脈縮窄症は大動脈の狭窄を示す疾患で、動脈管が大動脈から出る付近におこりやすく、動脈管の開存を伴うことが多い。そのほかの疾患としてはバルサルバ洞動脈瘤(りゅう)破裂、冠状動静脈瘻(ろう)などがあげられる。[竹内慶治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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