応用社会学(読み)おうようしゃかいがく(英語表記)applied sociology

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

応用社会学
おうようしゃかいがく
applied sociology

理論や仮説の構成を目ざす理論社会学、データの収集と仮説の検証を目ざす実証社会学に対して、これらによる知見を、現実の社会問題の解決に応用しようとする研究をいう。1920年ごろから、とくにアメリカで、犯罪、貧困、人種関係、結婚や家族問題、産業組織の人間関係、教育問題、地域計画、コミュニケーションおよび宣伝、マーケティング、政府の政策立案などの分野で、社会学者による応用的研究が盛んに行われてきた。社会改良ないし社会改革の実践的な動機に基づく社会事業調査や社会政策的研究は、19世紀以来行われてきたが、応用社会学の名称は、20世紀になってアメリカの社会学者ウォード、ドイツの社会学者ドゥンクマンKarl Dunkman(1868―1932)らによって主張された。しかし当時はまだ、理論、実証、応用の間の論理的・有機的関係については明確な規定はみられなかった。
 応用社会学の方法や技術については、近年いくつかのモデルが提起されている。まず小集団の事態の改善について、社会心理学者レビンは、社会工学的なアクション・リサーチ(実践研究)を主唱し、人間関係の改善、集団間の葛藤(かっとう)の解消、集団活動の生産性の向上などの目標達成のため、正確な事態の診断、グループ・ダイナミックス(集団力学)理論に基づく利用可能な手段の検討、ついで行動の第1段階の決定と実施、結果の評価、行動計画の修正、行動の第2段階の計画と実施……という螺旋(らせん)的な循環過程の実践を構想した。いっそうマクロな事態、たとえば社会制度の望ましい変化をつくりだす目標は、方法や技術の面でさらに困難であるが、理論社会学者パーソンズは、その社会システム理論に基づいて、サイバネティックスのモデルによるシステム機能の変化の創出、という構想を提起している。実証研究者の側からは、社会心理学者ラザースフェルドが応用社会学の問題点の体系的検討を試み、社会学的知識の実践的課題への利用のための理論化を目ざしている。応用研究の約100事例を分析し、事態の認知過程と改善のための勧告書の間のギャップ、費用・便益分析の問題点、政策立案者と社会科学者の間のギャップなどの改善が指摘されている。
 社会科学においても、自然科学における理論科学・実験科学・応用科学のモデルを指向しているが、それらの関係についてはまだ検討されるべき点が多い。[大塩俊介]
『K・レヴィン著、末永俊郎訳『社会的葛藤の解決』(1954・創元社) ▽T. Parsons The Ideas of Systems, Causal Explanation and Cybernetic Control in Social Science, in Daniel Lerner (ed.), Cause and Effect (1965, The Free Press, N.Y., U.S.A.) ▽P. F. Lazarsfeld and J. G. Reitz An Introduction to Applied Sociology (1975, Elsevier, N.Y., U.S.A.)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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