心霊現象の一つ。露光を与えることなく、思念するだけで写真乾板やフィルムに感光効果をおこさせる現象。超心理学の研究対象である。心理学者の福来友吉(ふくらいともきち)は1910年(明治43)長尾郁子(いくこ)に未現像の写真乾板上の文字を透視させたとき、不可解なかぶり現象を発見し、念写の可能性に気づいた。彼は写真乾板を厳重に遮光封印して能力者に渡し、文字、人物、風景などを思念させ、それらの映像を得た。当時、山川健次郎(1854―1931)らの物理学者も実験して、その真偽について論争が行われた。その後、1970年代に念写能力者が現れて社会的関心をよび、学問的研究も行われたが、その真実性はまだ認められていない。
[大谷宗司]
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…迷信の打破を目的とし,心霊現象自体の研究をめざすものではなかったが,科学的な調査を行ったという点で評価に値する。1910年,同じく東京帝国大学の心理学助教授福来(ふくらい)友吉は,催眠の研究から透視研究へと入り,その経過の中で〈念写〉という現象を欧米の心霊研究とは独立に発見している。念写研究で福来のとった研究態度は,欧米の心霊研究のそれと比較して遜色のないほど科学的に厳密なものであったが,反対論者を納得させるには至らなかった。…
…1861年アメリカのマムラーWilliam Mumlerが死んだ親族の姿を偶然に写したのが最初といわれる。近縁の現象に,福来友吉が1910年に発見した念写thoughtographyがある。これは,心で念じた像を直接写真乾板に感光させるものである。…
…催眠の研究を続けるが,1910年透視の存在を知り,御船(みふね)千鶴子(1886‐1911)を対象に透視の研究を開始。同年11月長尾郁子(1871‐1911)の透視能力を研究中,透視目標にした未現像の写真乾板にカブリが見られ,そのことから念写(心霊写真)の可能性を推定,翌12月長尾を対象に最初の念写実験を行い,センセーションをまきおこした。さらに数名を対象に実験を重ね,結果を《透視と念写》(1913)としてまとめる。…
※「念写」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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