梅沢浜夫らによって福岡県の土壌から分離された放線菌Streptomyces verticillus株の培養液から得られた抗腫瘍抗生物質。1966年に報告された。アミノ酸や糖がつながった分子量約1500の水溶性塩基性物質で銅を含んだものとして抽出される。末端についているアミンの構造が異なった13種類の混合物として得られるが,ブレオマイシンA2が主成分である。製剤は塩酸塩または硫酸塩でA2を50%以上含み銅を除いてある。白色~帯黄色の粉末,水によく溶け,水溶液はきわめて安定である。グラム陽性菌・陰性菌,抗酸菌の増殖をよく阻止する。陰茎癌に対する著しい効果が66年見いだされ,その後,扁平上皮癌に対する効果が認められた。扁平上皮癌に著しい効果を示すことがブレオマイシンの特徴であり,これはブレオマイシンが扁平上皮組織によく集まり,そこであまり破壊されないことによる。特定の癌だけによく効く制癌薬を開発する道を開いたといえよう。鉄をキレートした形でブレオマイシンが癌細胞のDNAに結合してDNAを切断することがその作用機序であり,これは従来知られていなかった新しい作用機序である。皮膚癌,頭頸部癌,ホジキン病,睾丸腫瘍などの治療に世界的に用いられている。他の抗癌薬にくらべ骨髄障害などの重篤な副作用が少ない点ですぐれているが,肺繊維症を起こすという特徴的な副作用により投与量は限定される。肺毒性が少なく,治療効果の高い物質を求めて300以上のブレオマイシン誘導体が合成され,ペプロマイシンと名づけられたものが81年から臨床的に用いられるようになった。
→抗生物質
執筆者:鈴木 日出夫
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…国立予防衛生研究所部長,東大教授,微生物化学研究所長を歴任。第2次大戦末期,長兄の純夫らとともにペニシリンの分離に成功したのをはじめ,カナマイシン,ブレオマイシンなど多数の新抗生物質,および酵素阻害物質の発見をなした。ことに制癌剤の分野で新境地を開き,免疫修飾物質の研究に及んだ。…
…日本では,世界にさきがけて実験動物腫瘍を用いて制癌抗生物質の探索を始め,この分野では世界の水準の先端にあるといえる。日本で発見され臨床的に用いられているものに,秦藤樹のカルチノフィリン(1954),マイトマイシン(1956),梅沢浜夫のブレオマイシン(1966),ペプロマイシン(1977),アクラシノマイシンA(商品名アクラルビシン,1977),立岡末雄のクロモマイシンA3(1955),石田名香雄のネオカルチノスタチン(1965)があり,とくにブレオマイシン,マイトマイシンは外国でもよく用いられている。外国で発見されたもので治療に用いられているものに,アクチノマイシンD,ダウノルビシン(商品名ダウノマイシン),ドキソルビシン(商品名アドリアシン)がある。…
…造血器への副作用は比較的大きい。ブレオマイシンは66年梅沢浜夫らが放線菌の1種から分離したもので,皮膚癌などの扁平上皮癌の治療に利用されている。間質性肺炎,肺繊維症などの副作用が知られている。…
※「ブレオマイシン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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