改訂新版 世界大百科事典 「成果配分制度」の意味・わかりやすい解説
成果配分制度 (せいかはいぶんせいど)
企業が生産性向上の成果を労働者に分配する制度。月給・ボーナスといった通常の給与形態以外に,特別の制度として支払われるものだけに使うのが普通である。成果配分によって生産性向上への刺激となることを期待したものであり,広義には経営参加制度の一つと考えられている。この制度はフランスで生まれたといわれるが,おもにアメリカで発達した。分配する成果としては,利潤,付加価値,生産額または売上高など種々のものがあり,配分の方法も,自社の一定率以上の増加分を配分するものから,産業全体の生産性水準以上の部分を配分する方法など種々くふうされている。有名なのはアメリカでくふうされたプランで,売上高の一定比率を定め,実際の人件費がそれ以下であった場合,その差額を生産性向上の成果として配分し,生産性向上の努力を促そうとするスキャンロン・プランScanlon plan(鉄鋼労組幹部,マサチューセッツ工科大学講師などの経歴をもつJ.N. スキャンロンが考案),付加価値のなかの人件費率が統計的に一定であることから,この一定の人件費率に実際の人件費が満たない場合,その差額を配分するラッカー・プランRucker plan(アメリカの経営コンサルタント会社の代表A.W.ラッカーが考案)などである。アメリカでは多数の企業がこれらの成果配分制度を採用しているが,日本では,ボーナスの増減で実質的に実施していても,成果配分という明確な制度として採用している企業は少ない。
執筆者:高柳 暁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報