日本大百科全書(ニッポニカ) 「成熟土」の意味・わかりやすい解説
成熟土
せいじゅくど
mature soil
地表における風化(正しくは土壌化)生成物である土壌は、その場所の気候や植生の影響下に母材から変化したものである。母材は初期に変化を受け始めてから長年月を経て、一定の垂直断面形態を備えた成熟土に達すると考えられる。変化のプロセスは、断面形態にみられる層位分化の進み方で、どの段階にあるか判断される。母材中の可溶性成分が溶脱し、一部の成分が集積して、ABCの層位が出現すると、その後気候変化や地殻変動がない限りその特徴的な断面形態は保たれるとみなされ、各地の気候と植生に由来する土壌型が認定された。ポドゾル、褐色森林土、赤黄色土、ラトソル、チェルノゼムなど成帯性土壌(気候型土壌)の数種は、成熟土として特有の断面形態をもつ土壌である。母材の性質がきわめて特殊な土壌、たとえば石灰岩地方のレンジナやテラロッサは成帯性土壌には含まれないが間帯性土壌としてそれぞれ成熟土となりうる。
成熟土が成熟に達する時間についてはいくつかの推論が出されているが、実証ができない。北ヨーロッパのポドゾルの場合、数千年で安定し成熟した断面形に達すると論じられた例がある。
[浅海重夫・渡邊眞紀子]