現行戸籍法のもとで編製される戸籍簿の筆頭に記載される者をいう。ただしこの語は民法旧規定にいう〈戸主〉とは違って,戸籍簿上に明記される用語ではなく,第1列下段の〈氏名〉欄に記載され,上段の〈本籍〉欄と併せて〈戸籍の表示〉と呼ばれる。改正前の民法・戸籍法では,戸籍は家の統率者である戸主を中心として編製され,家の構成員は戸主との続柄(母,妻,二男など)によって把握された。家制度(家族制度)を廃止した現行民法では,基本的には夫婦およびそれと氏を同じくする子を一つの単位として同籍に登載する。新戸籍を編製する場合には,氏に関する民法上の規定にしたがい,自己の氏が新戸籍編製の基準となった者が筆頭者となる。たとえば婚姻届にもとづいて編製される戸籍では,夫の氏を称する届出の場合は夫が,妻の氏を称する届出の場合は妻が筆頭者となる。ひとたび戸籍が編製された後は,筆頭者個人の身分行為,死亡による除籍,身分変動に伴う氏の変更などが生じても,筆頭者欄の氏名は変更されない。すなわち,その戸籍に登載された最後の1人が除籍されるまでは戸籍簿の,それ以後は除籍簿の筆頭者でありつづける。一般には,戸主と違い,何の権限ももたない〈単なる検索の手段〉と説明されるが,そう断言はできない。戸籍法107条に定める〈氏の変更〉の申立ては筆頭者(配偶者を有する場合は双方とも)に限られるなど,法律上の権限もある。社会的効果としては,筆頭者という立場は依然〈戸主〉〈世帯主〉とともに他の家族とはちがうもので,しかも男の領分と意識されている。婚姻の際に妻の氏の届出が1%にすぎないことは,女を戸籍筆頭者とすることを嫌う風潮とも関連する。氏・本籍とともに家意識の温存に一定の役割を果たしているといえるのである。
→戸籍
執筆者:星野 澄子
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…さらに,戸籍制度の制度的特質もまた,一貫して維持されている。すなわち,戸籍は,一定の人(戦前は戸主,現在は戸籍筆頭者)を中心とする一定範囲の親族を単位として編製され,各個人の親族的身分関係の発生,変更,消滅の記載は,原則として届出によってなされる。これらの点において戸籍制度は,欧米の身分登録(証書)制度が,原則として各個人について,それぞれ出生証書,婚姻証書,死亡証書などを作成し,かつ婚姻証書の作成については当事者自身の意思の申述を必要としているのと異なる。…
※「戸籍筆頭者」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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