百科事典マイペディア 「手越宿」の意味・わかりやすい解説
手越宿【てごしのしゅく】
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駿河国(静岡県)の中世の宿駅。現在,静岡市駿河区手越は安倍川右岸に位置するが,中世には藁科川右岸にあり,すでに平安時代末期には駿河国府への渡頭集落として栄えていた。《吾妻鏡》によれば,1180年(治承4)に源氏追討をめざす平家軍が手越駅に到着しており,また89年(文治5)には手越平太家綱というものが,戦功によって源頼朝から麻利子(丸子)を賜り,駅家の建設を許されている。以後,《海道記》の手越の宿をはじめ,中世を通じて紀行文などにその名がみえる。なお,平重衡と宿長者の娘千手前の物語は,謡曲《千手(せんじゆ)》で名高い。南北朝内乱初期,1335年(建武2)7月には北条時行軍と足利直義軍が,また同年12月には新田義貞軍と足利直義・高師泰軍とが,それぞれ手越河原で激戦を展開した。近世には,府中(駿府)と丸子に宿駅が設置されたため,手越は直接的な宿駅機能は果たさなかったが,手越村は天領となり,安倍川の川越(かわごし)人足役を務めた。
執筆者:本多 隆成
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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