日本古代の駅伝制の駅の主要施設。駅馬の中継所。駅家の家は,郡司の住む郡家(ぐうけ)の家と同じく,私宅を兼ねた役場の意。文献によれば,築地にかこまれた駅院が駅馬の通る路に面して駅門をひらき,院内には駅馬の厩舎や水飲場をはじめ,駅長らのいる事務室,駅馬を使う官人やその馬丁を勤める駅子(えきし)の休息・飲食・宿泊のための建物,馬具・蒭(まぐさ)・駅稲(えきとう)・酒・塩などを納める倉庫などのあったことが想定できるが,それらは村落の有力者である駅長の私宅部分と区別しがたく,考古学的には駅家の遺跡がまだ明白でない。また駅家は都や国府から次の国府までの駅路という交通の要路にそい,原則として30里(約16km)ごとに設置され,その周囲には駅の諸業務に従事する駅戸を出す村落が必要なので,郡家と同じ地区にあるばあいも少なくない。なお駅家は兵部省の管轄下にあり,10世紀初頭の《延喜式》には全国で402の駅名があげられている。
→駅伝制
執筆者:青木 和夫
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「うまや・はゆまうまや」とも。古代駅制の駅路に設けられた施設,また駅務に従事する駅戸から構成される組織。30里(約16km)ごとに設置され,一定数の駅馬がおかれた。「延喜式」の駅数は全国402カ所。駅使(えきし)は駅馬で次の駅へ送られるほか,駅で食料を供給され,休息や宿泊もできた。駅の施設は一般に周囲が区画され,門があり複数の屋と倉で構成されていた。山陽道の駅家は瓦葺,朱塗,白壁だった。財源にははじめ駅(起)稲(えきとう)・駅(起)田が設定されたが,のち正税があてられた。駅の管理・運営は国司の管下に駅戸から任じられた駅長があたった。駅家は郷と同じ編戸集団でもあり,「和名抄」には駅家郷,駅名と同名の郷として一郷をなす例も全国にみえ,駅長は郷長と同じ任務も負っていた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
広島県東部、福山市の一地区。旧駅家町。地名は古代の山陽道の宿駅に由来する。芦田(あしだ)川の中流域にあり、条里制の遺構が残る。江戸時代に灌漑(かんがい)用につくられた服部大池(はっとりおおいけ)があり、池畔のサクラで知られる。JR福塩(ふくえん)線、国道486号が通じる。
[編集部]
古代令(りょう)制の駅伝制度の一つ。「えきか」とも読む。七道の約30里(16キロメートル)ごとに置かれ、駅子(えきし)、駅馬(えきば)の継ぎ立てや、駅使の宿泊、食料供給の施設。国司所管のもとで駅長が駅務を行い、郷(ごう)と同じく一つの行政地域をなす。
[田名網宏]
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…駅馬の中継所。駅家の家は,郡司の住む郡家(ぐうけ)の家と同じく,私宅を兼ねた役場の意。文献によれば,築地にかこまれた駅院が駅馬の通る路に面して駅門をひらき,院内には駅馬の厩舎や水飲場をはじめ,駅長らのいる事務室,駅馬を使う官人やその馬丁を勤める駅子(えきし)の休息・飲食・宿泊のための建物,馬具・蒭(まぐさ)・駅稲(えきとう)・酒・塩などを納める倉庫などのあったことが想定できるが,それらは村落の有力者である駅長の私宅部分と区別しがたく,考古学的には駅家の遺跡がまだ明白でない。…
…大化改新後,7世紀後半の律令国家形成期には,駅鈴によって駅馬を利用しうる道を北九州との間だけでなく東国へも延ばしはじめたようであるが,8世紀初頭の大宝令では唐を模範とした駅制を全国に拡大することとした。すなわち朝廷は特別会計の駅起稲(えききとう)・駅起田(えききでん)(後の養老令では駅稲・駅田)を各国に設置させ,これを財源として畿内の都から放射状に各国の国府を連絡する東海・東山・北陸・山陰・山陽・南海・西海の7道をそのまま駅路とし,駅路には原則として30里(約16km)ごとに駅を置かせ,駅ごとに常備すべき駅馬は大路の山陽道で20匹,中路の東海・東山両道で10匹,他の4道の小路では5匹ずつとし,駅の周囲には駅長や駅丁を出す駅戸を指定して駅馬を飼わせ,駅家(うまや)には人馬の食料や休憩・宿泊の施設を整え,駅鈴を貸与されて出張する官人や公文書を伝送する駅使が駅家に到着すれば,乗りつぎの駅馬や案内の駅子を提供させることとした。その結果,もっとも速い飛駅(ひえき∥ひやく)という駅使は,大宰府から4~5日,蝦夷に備えた陸奥の多賀城からでも7~8日で都に到着することができた。…
※「駅家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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