抉る(読み)エグル

デジタル大辞泉 「抉る」の意味・読み・例文・類語

えぐ・る〔ゑぐる〕【×抉る/×刳る】

[動ラ五(四)]
刃物などを深く刺し入れ、回して穴をあける。くりぬく。「りんごの芯を―・る」
心に強い衝動や苦痛を与える。「胸を―・られる悲しみ」
物事の隠れた面を鋭く追及する。「事件核心を―・る」
[可能]えぐれる
[動ラ下二]えぐれる」の文語形
[類語]くりぬくほじくるくるえぐり出すくじるこじるほじるほじくり出すほじくり返す

くじ・る【×抉る】

[動ラ五(四)]
棒などで、穴の中をかきまわす。「楊枝ようじで歯を―・る」
えぐって中の物を取り出す。
まなこを―・りて、其眼玉をえぐり出し」〈江見水蔭女房殺し
堅い物を突き刺して穴をあける。うがつ。
「穴を―・り」〈竹取
[類語]えぐるくりぬくほじくるくるえぐり出すこじるほじるほじくり出すほじくり返す

こじ・る【×抉る】

[動ラ五]《「こじる」(上一)の五段化》
すきまなどに物をさし入れてねじる。「雨戸を―・って開ける」
ひねくれた言い方をしたり、抗議したりする。
小母につけつけ―・られていたりするところが」〈三重吉小鳥の巣〉
[補説]近世末ごろから五段化した用例がみられるが、2のような例は、上一段活用とも考えられる。
[類語]えぐるくりぬくほじくるくるえぐり出すくじるほじるほじくり出すほじくり返す

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「抉る」の意味・読み・例文・類語

えぐ・るゑぐる【抉・刳・剔】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 刃物などを物に突き刺して回す。また、突き刺してその部分をくりぬく。
      1. [初出の実例]「剃刀取りて咽に突き立て、柄も折れよ刃も砕けよとゑぐり」(出典:浄瑠璃・曾根崎心中(1703)道行)
    2. 鋭い表現などによって、人の心に強い苦痛、動揺、または感動を与える。
      1. [初出の実例]「由良が一坐が大ぜいで来た。おれをゑぐるちうもんだらふ」(出典:洒落本・通神蔵(1801‐02)一一)
      2. 「忠臣蔵十二時のしゅかうなんざア見物の腹をゑぐりやしたぢゃアごぜへやせんか」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三)
    3. 物事、事実などの隠れた面を、鋭く追及する。
      1. [初出の実例]「私立銀行の内幕を剔(ヱグ)った記事」(出典:菊池君(1908)〈石川啄木〉四)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙えぐれる(抉)

くじ・る【抉・挑】

  1. 〘 他動詞 ラ行四段活用 〙
  2. 物をつき入れてねじりほじくる。穴を掘る。えぐる。うがつ。〔新訳華厳経音義私記(794)〕
    1. [初出の実例]「穴をくしり、かいばみまどひあへり」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  3. えぐって中から物を抜き取る。
    1. [初出の実例]「鼻を截り、眼を挑(クシリ)」(出典:岩淵本願経四分律平安初期点(810頃))
    2. 「食事ごとには手洗ひ、口そそぎ、髪を掻き、爪の垢をくじり、頗る清潔に出で立てども」(出典:仏国風俗問答(1901)〈池辺義象〉清潔を好む風)

抉るの語誌

「くじる」の「じ」は、「書陵部本名義抄」の声点などから、濁音であったことがわかる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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