投弾(読み)とうだん

精選版 日本国語大辞典 「投弾」の意味・読み・例文・類語

とう‐だん【投弾】

  1. 〘 名詞 〙 爆弾を投下すること。
    1. [初出の実例]「今朝の新聞で昨日の東京空警は、B29一機襲来、投弾せずとのことでホッとした」(出典:古川ロッパ日記‐昭和一九年(1944)一一月六日)

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改訂新版 世界大百科事典 「投弾」の意味・わかりやすい解説

投弾 (とうだん)

武器,狩猟具の一種。石,土(水でこねた粘土を日乾しあるいは焼成),まれには鉛で作った球形卵形紡錘形の弾(直径は長径2~6cm,重さ十数g~百数十g)。これを飛ばすには,帯(スリングsling)か帯付きの杖を用いる。帯は毛糸皮革,植物繊維などしなやかな材料で作り,長さ1m強,中央の幅広く作った座に弾をのせて帯を二重に折り,一端に指掛けの環を作り出してある場合は,これに小指を掛け,環がなければ一端を小指と薬指の間に挟み,もう一端は親指人差指の間に挟む。右利きの場合,本人から見て時計回り手首を中心に3~4回回転してから,親指と人差指でつかんでいた端をはなすと,弾は遠心力によって初速100km/h以上で目標に向かって飛ぶ。到達距離は350~450mに及び,矢の到達距離(200m)に勝る。帯付きの杖の場合は,杖を回転して帯にのせた弾を発射する。到達距離は200m内外。投弾はゴリアテを倒したダビデ逸話でも名高い。古代西アジアで大いに発達し,ギリシア,ローマに継承された。弓矢と比べ材料が豊富で量産が可能であり,温湿度の影響を受けにくく,また片方の手で盾を持ちながら使えるなどの有利さから重用された。しかし動かない軍団同士の対決から騎馬戦に,そして重い甲冑をまとった戦いへと戦法が変わるとともに,武器としての使命を終えた。

 民族例の狩猟用投弾は世界各地で知られ,特に太平洋の島々では先史時代以来,最近まで使われていた。日本では西日本の弥生時代遺跡から,紡錘形の土製投弾の出土例がある。ほかに弾を投ずる武器・狩猟具としては,2個から数個の石を紐で結びあわせたものを投じ,獣の足などにからませるボーラbolasがあり,アフリカ,ヨーロッパ,中国の旧石器時代に,また極北(エスキモー),南アメリカのパタゴニアの民族例にある。なお〈弾〉の字はもともと弓で発射する弾をさし,弾弓は古代中国やインドの民族例に知られ,また正倉院宝物にもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「投弾」の意味・わかりやすい解説

投弾
とうだん

紡錘形をした、長さ5センチメートル、中央の最大径3センチメートル内外の素焼土製品ないしは石製品。紐(ひも)を巻き付けて、振り回して投擲(とうてき)する狩猟用具であり、また武器ともなる。ミクロネシア、メラネシア、ポリネシア方面の広範な地域に分布し、わが国の弥生(やよい)時代の遺跡からも主として土製素焼のものが発見される。西北九州地方に発見例が多いが、南九州、中国、四国、近畿、中部、関東地方などにも出土例があり、土弾子(つちだま)ともよばれた。弥生文化遺跡出土の土製投弾は、最大のもの長さ5.6センチメートル、重さ70グラム、最小のもの長さ3.2センチメートル、重さ5グラム、平均長さ4.2センチメートル、重さ30.6グラムほどである。磨製石製品は西北九州、山口、兵庫、静岡、富山県下などに出土例があり、重量は最大70グラム、平均34.7グラム、最小15グラムと土製品とほぼ近似している。これらは弥生時代に南方から伝播(でんぱ)したものであろうか。

[江坂輝彌]

『八幡一郎著『石弾・土弾』(1984・慶友社)』

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