藤原定家(ていか)の家集。「拾遺」は侍従(じじゅう)の唐名(とうみょう)で定家の官職名。上中下の3巻は1216年(建保4)に成立し、その後も出家時の1233年(天福1)まで増補。上巻は初学(しょがく)百首から関白左大臣家百首までの15種の百首、中巻は韻歌(いんか)128首から女御入内屏風歌(にょうごじゅだいびょうぶうた)の12種の作品、下巻は四季、賀、恋、雑の部類歌を収める。本集には、10代後半の習作期の歌から、新風開拓に苦心し、世間から達磨(だるま)歌と評された文治(ぶんじ)・建久(けんきゅう)期(1185~99)の歌をはじめ、その長い作歌活動の生涯の大部分の詠作が集められている。伝本は、(1)自筆本系(定家自筆本。冷泉為臣(れいぜいためおみ)編『藤原定家全歌集』に翻刻。1940・文明社)、(2)来田(らいた)本系(定家自筆の草稿本)、(3)六家集本系(自筆本に後人の増補)がある。『拾遺愚草員外(いんがい)』1巻は、正編3巻の完成後、早い時期に補足したもので、1237年(嘉禎3)ごろに大部分が完成。巻末の藤川百首は後人の追加である。
[有吉 保]
『赤羽淑著『藤原定家全歌集全句索引』(1974・笠間書院)』
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