ことわざを知る辞典の解説
捨てる神あれば拾う神あり
[使用例] 「あのおかみさんがですか」「ああ、いつも、わたしと、あんたのことは、心配しているんだよ……」井川はしんみりといった。世の中は、捨てる神あれば拾う神ありである。どのような縁で、どんな人とむすばれるかわかったものではない[水上勉*木綿恋い記|1970]
[使用例] 退社したのは、十二月の半ばであったが、余計な給料は要らないと、余計な口をきいたので、私はこの年の暮れを越すのに
[解説] 中世から類似の表現が確認できることわざで、古くは「すつる神あれば引きあぐる神あり」といいました。対句の形式で、「捨てる」の対義語として「拾う」の代わりに「助ける」とすることも江戸時代からみられ、今日でも併用されています。
この「神」は、用例をみてもわかるように、具体的には人をさしていうのがふつうです。私たちは、無意識のうちにこれを了解していて、日常の会話のなかで、ある程度特定の人物を念頭におきながら、このことわざを使うことが多いといえるでしょう。日本文化のなかでは、神が数多く存在し、現世の人間と連なっていることをあらためて感じさせる表現です。
〔英語〕When one door shuts, another opens.(一方の扉が閉まると、他方が開く)
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