掠る(読み)カスル

デジタル大辞泉 「掠る」の意味・読み・例文・類語

かす・る【×掠る/擦る】

[動ラ五(四)]
軽く触れて通り過ぎる。かすめる。「弾丸が耳を―・った」
上前をはねる。「賃金を―・る」
かすり書きにする。
他人のものをちょっと利用する。
「その提灯明りを―・り、わしも隣の念仏講へ」〈伎・四谷怪談
容器の底にわずかに残っているものをこそげ取る。
「夕に米唐櫃こめがらとを―・り」〈浮・禁短気・四〉
ほのめかす。におわす。
「その人の名は言ひかねて、思ふあたりを―・らする」〈浄・万年草
[動ラ下二]かすれる」の文語形
[類語]触れる接する触れ合うさわ接触する触接するタッチするよぎる横切るちらつくかすめる通る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「掠る」の意味・読み・例文・類語

かす・る【掠・擦】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 通り過ぎるときなどに表面にさっと触れる。他の物の表面を一瞬かすかにこするようにして過ぎる。比喩的にも用いる。
      1. [初出の実例]「懸植事〈略〉惣而枝のかすることなし」(出典:松下十巻抄(1531)蹴鞠条々)
      2. 「金から吹起る都の腐れ風に日向(ひなた)臭い横顔を漸々(だんだん)かすられ」(出典:油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉一)
    2. 軽くその事に関して触れる。ほのめかす。また、もとの語をたくみに利用してしゃれほのめかす。
      1. [初出の実例]「すこくとは意如何。かするの常詞歟(か)」(出典:異本紫明抄(1252‐67)三)
      2. 「天智天皇の哥をかすりてよみけるを聞は」(出典:咄本・鹿野武左衛門口伝はなし(1683)上)
    3. 軽く触れたかのように動く。
      1. [初出の実例]「柔かな薄雲が、〈略〉所々大胆にかすってゐる」(出典:真理の春(1930)〈細田民樹〉森井コンツェルン)
    4. 上前(うわまえ)をはねたり、ごまかしたり、倹約したりなどして利益を得る。
      1. [初出の実例]「そば切のあかりをかする夜はまぐり」(出典:雑俳・川柳評万句合‐宝暦一三(1761)礼五)
    5. 中に入れた物が少なくなって、取り出すときに容器の底に軽く触れる。また、底までさらう。底までなくす。
      1. [初出の実例]「ツボソコヲ casuru(カスル)〈訳〉壺の底をこそげる」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙かすれる(掠)

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