デジタル大辞泉
「通る」の意味・読み・例文・類語
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とお・るとほる【通・徹・透】
- 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
- [ 一 ] 一方から他方にとどく。
- ① 物の表から裏までしみこむ。また、突いて裏へ抜ける。
- [初出の実例]「わが袖は手本(たもと)等保里(トホリ)て濡れぬとも恋忘れ貝取らずは行かじ」(出典:万葉集(8C後)一五・三七一一)
- 「二刀は鎧の上なればとをらず、一刀はうち甲へつき入(いれ)られたれ共」(出典:平家物語(13C前)九)
- ② 細い管、穴などが中空で一方の口から他方の口まで通じる。また、詰まっていたものがとれたり、取り除かれたりして通じる。
- [初出の実例]「七曲(ななわた)にわだかまりたる玉の、中とほりて左右に口あきたるが」(出典:枕草子(10C終)二四四)
- 「もう二三日食物が通(トホ)らなければ」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉五三)
- ③ 音や光などが遠い所、奥深い所にまで達する。
- [初出の実例]「横笛吹き給ふ。折に合ひたる調子、雲井とをるばかり吹き立てたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
- 「コウクヮイ ココロニ touoru(トヲル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ④ 物事に深く通じて熟達する。
- [初出の実例]「文をならひよみたれば、ただ通りに通りて、才ある人になりぬ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一三)
- ⑤ 薄い物や透明な物を間において向こうが見える。すきとおる。また、光などが、物を通してさしこむ。
- [初出の実例]「妙なる色暎(て)り徹(トホリ)て」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)五)
- 「かたはらの光の、ものの上(かみ)などよりとほりたれば」(出典:枕草子(10C終)二〇一)
- ⑥ 筋が、一方から他方へまっすぐにつく。
- [初出の実例]「ツト入来りし男年頃廿四五なるべく、鼻筋とほり色白く」(出典:藪の鶯(1888)〈三宅花圃〉八)
- 「頑固な、然し柾(まさ)の通った」(出典:今年竹(1919‐27)〈里見弴〉二夫婦)
- ⑦ 鉄道、道路、配管などが、設けられる。敷設される。通ずる。「鉄道が通る」
- [初出の実例]「十一月下旬のことで、すでに楽屋にはスチームがとほってゐる」(出典:女方(1957)〈三島由紀夫〉三)
- ⑧ 筋道がついて意味、内容が理解される。また、道理にかなう。「意味が通る」
- [初出の実例]「何処から話したなら一番筋が通って」(出典:野の花(1901)〈田山花袋〉一)
- ⑨ 料理屋などで客の注文が帳場に知らされる。
- [初出の実例]「通ってをりますから、もう参りませう」(出典:歌舞伎・月梅薫朧夜(花井お梅)(1888)二幕)
- [ 二 ] ある所を過ぎて、先へ進む。
- ① 過ぎて、その先へ進む。通行する。
- [初出の実例]「天飛(あまだ)む 軽をとめ しただにも 寄り寝て登富礼(トホレ) 軽をとめども」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「本寺の前をとほる下法師に」(出典:徒然草(1331頃)二一八)
- ② 室内にはいる。座敷にあがる。
- [初出の実例]「奥方の居間に通(トホ)れば」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中)
- ③ 資格が認められて先の段階に進めるようになる。試験に合格する。
- [初出の実例]「試験━此が如何であらふか。無事に通れば可」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四)
- [ 三 ] 世間や相手の人に認められたり知られたりする。
- ① 希望がかなう。また、主張などが認められる。
- [初出の実例]「おのづから、本意とほらぬ事多かるべし」(出典:徒然草(1331頃)一四一)
- ② 世間に認められて通用する。また、相手に理解される。
- [初出の実例]「この花の公案なからん為手(して)は、上手にてはとほるとも」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)三)
- 「あれでさへ家業になって通(トホ)る」(出典:滑稽本・浮世床(1813‐23)初)
- ③ 広く知られる。
- [初出の実例]「ひろとくのうとうとしい、おいでてゐるも、よくとをったものじゃノ」(出典:洒落本・北華通情(1794))
- 「大変な羞恥屋(はにかみや)で通(トホ)ってゐたので」(出典:硝子戸の中(1915)〈夏目漱石〉一七)
- ④ 物わかりのいい性格である。さばける。また、その方面の通(つう)である。
- [初出の実例]「かい手の心におひて、とをり者あり、とをらざるあり」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)上)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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