通る(読み)トオル

デジタル大辞泉 「通る」の意味・読み・例文・類語

とお・る〔とほる〕【通る/徹る/透る】

[動ラ五(四)]

㋐物を貫いて反対側に至る。「串が―・る」
一方の口から差し入れて他方の口に出る。「袖に手が―・る」
㋒まんべんなくゆきわたる。「肉に火が―・る」
㋓二点間を結ぶ道筋ができる。「高速道路が―・る」
㋔まっすぐな筋目が立つ。「柾目まさめが―・る」
人や車が行き来する。「絶え間なく車が―・る」

㋐ある場所を過ぎる。「海辺を―・る」「東京を―・って仙台に行く」
㋑(人が)屋内や室内に進み入る。「座敷に―・る」
㋒料理店などで、客の注文が帳場に取り次がれる。

㋐認められて成り立つ。「法案が―・る」「願いが―・る」
矛盾がなくて内容が理解できる。「理屈が―・っている」
㋒とがめられずに受け入れられる。「無理が―・る」
㋓それなりに通用する。「頑固者で―・る」
遠くまで伝わる。「よく―・る声」
評判になる。「名の―・った店」
相手に通ずる。
「おのづから本意―・らぬこと多かるべし」〈徒然・一四一〉
[可能]とおれる
[類語](2行く行き通う通う行き交う行き来する往来する通行する運行する運転する交通走行往来往還/(3㋐)通過する経由する経る通り過ぎる過ぎるよぎる横切る通り抜ける/(4㋔)響く鳴る鳴り響く鳴り渡る伝わるとどろ高鳴るどよむどよめくうな響き渡る聞こえる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「通る」の意味・読み・例文・類語

とお・るとほる【通・徹・透】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. [ 一 ] 一方から他方にとどく。
    1. 物の表から裏までしみこむ。また、突いて裏へ抜ける。
      1. [初出の実例]「わが袖は手本(たもと)等保里(トホリ)て濡れぬとも恋忘れ貝取らずは行かじ」(出典:万葉集(8C後)一五・三七一一)
      2. 「二刀は鎧の上なればとをらず、一刀はうち甲へつき入(いれ)られたれ共」(出典:平家物語(13C前)九)
    2. 細い管、穴などが中空で一方の口から他方の口まで通じる。また、詰まっていたものがとれたり、取り除かれたりして通じる。
      1. [初出の実例]「七曲(ななわた)にわだかまりたる玉の、中とほりて左右に口あきたるが」(出典:枕草子(10C終)二四四)
      2. 「もう二三日食物が通(トホ)らなければ」(出典:道草(1915)〈夏目漱石〉五三)
    3. 音や光などが遠い所、奥深い所にまで達する。
      1. [初出の実例]「横笛吹き給ふ。折に合ひたる調子、雲井とをるばかり吹き立てたり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
      2. 「コウクヮイ ココロニ touoru(トヲル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
    4. 物事に深く通じて熟達する。
      1. [初出の実例]「文をならひよみたれば、ただ通りに通りて、才ある人になりぬ」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一三)
    5. 薄い物や透明な物を間において向こうが見える。すきとおる。また、光などが、物を通してさしこむ。
      1. [初出の実例]「妙なる色暎(て)り徹(トホリ)て」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)五)
      2. 「かたはらの光の、ものの上(かみ)などよりとほりたれば」(出典:枕草子(10C終)二〇一)
    6. 筋が、一方から他方へまっすぐにつく。
      1. [初出の実例]「ツト入来りし男年頃廿四五なるべく、鼻筋とほり色白く」(出典:藪の鶯(1888)〈三宅花圃〉八)
      2. 「頑固な、然し柾(まさ)の通った」(出典:今年竹(1919‐27)〈里見弴〉二夫婦)
    7. 鉄道、道路、配管などが、設けられる。敷設される。通ずる。「鉄道が通る」
      1. [初出の実例]「十一月下旬のことで、すでに楽屋にはスチームがとほってゐる」(出典:女方(1957)〈三島由紀夫〉三)
    8. 筋道がついて意味、内容が理解される。また、道理にかなう。「意味が通る」
      1. [初出の実例]「何処から話したなら一番筋が通って」(出典:野の花(1901)〈田山花袋〉一)
    9. 料理屋などで客の注文が帳場に知らされる。
      1. [初出の実例]「通ってをりますから、もう参りませう」(出典:歌舞伎・月梅薫朧夜(花井お梅)(1888)二幕)
  3. [ 二 ] ある所を過ぎて、先へ進む。
    1. 過ぎて、その先へ進む。通行する。
      1. [初出の実例]「天飛(あまだ)む 軽をとめ しただにも 寄り寝て登富礼(トホレ) 軽をとめども」(出典:古事記(712)下・歌謡)
      2. 「本寺の前をとほる下法師に」(出典:徒然草(1331頃)二一八)
    2. 室内にはいる。座敷にあがる。
      1. [初出の実例]「奥方の居間に通(トホ)れば」(出典:二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中)
    3. 資格が認められて先の段階に進めるようになる。試験に合格する。
      1. [初出の実例]「試験━此が如何であらふか。無事に通れば可」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四)
  4. [ 三 ] 世間や相手の人に認められたり知られたりする。
    1. 希望がかなう。また、主張などが認められる。
      1. [初出の実例]「おのづから、本意とほらぬ事多かるべし」(出典:徒然草(1331頃)一四一)
    2. 世間に認められて通用する。また、相手に理解される。
      1. [初出の実例]「この花の公案なからん為手(して)は、上手にてはとほるとも」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)三)
      2. 「あれでさへ家業になって通(トホ)る」(出典:滑稽本浮世床(1813‐23)初)
    3. 広く知られる。
      1. [初出の実例]「ひろとくのうとうとしい、おいでてゐるも、よくとをったものじゃノ」(出典:洒落本・北華通情(1794))
      2. 「大変な羞恥屋(はにかみや)で通(トホ)ってゐたので」(出典:硝子戸の中(1915)〈夏目漱石〉一七)
    4. 物わかりのいい性格である。さばける。また、その方面の通(つう)である。
      1. [初出の実例]「かい手の心におひて、とをり者あり、とをらざるあり」(出典:評判記・吉原すずめ(1667)上)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android