掠める(読み)カスメル

デジタル大辞泉 「掠める」の意味・読み・例文・類語

かす・める【×掠める】

[動マ下一][文]かす・む[マ下二]
すきをうかがって、すばやく盗む。「財布を―・める」
人の見ていないすきに、こっそり何かをする。「上役の目を―・めてサボる」
すれすれに通り過ぎる。かする。「ツバメ軒先を―・めて飛ぶ」
思いなどがちょっと現れてすぐ消える。よぎる。「不安が脳裏を―・める」
ほのめかす。
あらはに言ひなさで、―・め愁へ給ふ」〈東屋
[類語](1分捕るかっ払う盗む取る盗み取る掠め取る手を掛ける盗み窃盗盗用/(4よぎる横切るちらつくかする通る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「掠める」の意味・読み・例文・類語

かす・める【掠】

  1. 〘 他動詞 マ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]かす・む 〘 他動詞 マ行下二段活用 〙
  2. 盗む。奪い取る。他人の物を取って我が物にする。
    1. [初出の実例]「是に由りて唐人、其の南の堺を略(カスムル)こと得ず」(出典:日本書紀(720)天智元年三月(北野本訓))
  3. 人の見ていないすきに取る。
    1. [初出の実例]「生協や本屋からかすめてきた書籍の」(出典:半チョッパリ(1971)〈李恢成〉五)
  4. はっきり見えなくする。ぼかす。また、人の見ていないところで事をする。ごまかす。
    1. [初出の実例]「黒煙天を掠(カスメ)たり」(出典:太平記(14C後)一〇)
    2. 「人の目を掠(カス)めたり」(出典:人情本・閑情末摘花(1839‐41)初)
  5. ほのめかす。におわす。あてこすりをする。諷(ふう)する。
    1. [初出の実例]「『うとくおぼいたる事』などうちかすめ、恨みなどするに」(出典:枕草子(10C終)三六)
  6. ( の動作が、速く行なわれるところから、鳥などの水に触れて飛び去るさまをいい、さらに転じて ) 今にも触れそうにして通り過ぎる。すれすれに通る。かする。
    1. [初出の実例]「魂は身をもかすめずほのかにて君まじりなば何にかはせむ」(出典:篁物語(12C後か))
  7. 意識の上に瞬間的に浮かんですぐ消える。
    1. [初出の実例]「彼の頭を掠(カス)めた疑問が」(出典:闘牛(1949)〈井上靖〉)
  8. 人に迷惑をかける。
    1. [初出の実例]「かすめる 鹿島辺にて、人を迷惑さするを云ふ」(出典:新編常陸国誌(1818‐30頃か)方言)

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