念仏を唱え,極楽往生を期する同信者の集団。中国では廬山において慧遠(えおん)が結成した白蓮社(念仏講)があり,日本では平安中期以後,迎講,往生講,阿弥陀講などがあった。念仏講の名称は,中世以後の地方の文書や石碑の銘文にしばしばみられる。これらの念仏講は宗教的講集団として,中世以前の浄土教的講会と脈絡をもつと考えられる。とくに念仏講は葬送や死者の追善に関与することが多いが,これは源信の二十五三昧会(《二十五三昧式》)と系譜的に無関係ではなかろう。今も念仏講が弥陀講とも称され,葬式組となっている例が多い。浄土系の寺院には檀信徒で構成される念仏講があり,定期的に会合をもっている。住職の法話を聞き,おつとめをして念仏信仰を深め,また講員が死亡したときには通夜,葬儀に参加して,念仏や御詠歌を唱えたりする。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
念仏を唱えることを契機として結成されている講。普段は毎月、日を決めて寺や堂に集まりその本尊や路傍の石仏などへ念仏を唱えて村内安全や五穀豊饒(ほうじょう)などを祈願するが、村落内に死者が出た場合には、その弔いのための念仏を唱える集団ともなる。高齢の女性が中心となっている場合が多いが、男性が入っている例も少なくない。中高年の女性が入って盛んな活動をみせている例もある。念仏の練習であると同時に、茶菓子を持ち寄り談笑するなど親睦の意味合いも強い。多くは組単位で構成されているが、静岡県裾野市(すそのし)の中駿(ちゅうしゅん)大念仏のように広範囲に複数の念仏講が連携している例もある。
[新谷尚紀]
念仏を行う信者の集会。時代や講を構成する主体により目的や実態が違う。10世紀末に始まる比叡山横川(よかわ)の首楞厳院(しゅりょうごんいん)二十五三昧会(にじゅうござんまいえ)に起源をもつとされる。阿弥陀の念仏による往生や結衆(けっしゅ)の葬送に関するきまりをもち,これら根本結衆のほか外縁に結縁衆を含んでいた。やがて民間にも普及し,葬儀や祭祀にかかわる講として展開し,講員同士の相互扶助の性格もあわせもつようになった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…家を単位に,家格や家産に秩序の基準を置く東日本とは対照的といえる。なお,大人・年寄に類似したものとして,念仏講とか弥陀講と呼ばれる,老人たちの加入する年寄講が全国的に分布するが,これは村落内の権威として存在することは少なく,引退した老人たちの組織であり,大人・年寄とは性格が異なるものである。年齢階梯制【福田 アジオ】。…
※「念仏講」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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