日本大百科全書(ニッポニカ) 「接触改質法」の意味・わかりやすい解説
接触改質法
せっしょくかいしつほう
catalytic reforming process
ナフサを原料に、石油精製においては高オクタン価ガソリンの製造、石油化学においては芳香族炭化水素の製造を目的としたもの。1939年に登場したハイドロホーミングを初めとし、1949年に高性能白金担持(保持)アルミナ触媒を用いるプラットホーミングが誕生して以来、世界中で大規模な装置が運転されている。また、この装置で副生する水素も製油所における重要な水素源である。反応器内では多くの反応が複雑に組み合わさって進行しているが、おもな反応は6員環シクロパラフィン(シクロアルカン)の脱水素反応で、芳香族と水素が得られる。このほかに5員環シクロパラフィンの異性化脱水素反応、パラフィンの環化脱水素反応、パラフィンの異性化反応などがおこる。また、脱硫、脱窒素なども同時に行うことは可能であるが、反応条件や触媒の寿命などを考慮して、現在では原料をあらかじめ脱硫してから接触改質を行っている。
反応は、温度450~550℃、圧力3~35気圧、水素を原料炭化水素の1~10倍加えた条件で行われている。主反応が脱水素であるのに水素を加えるのは、芳香族炭化水素生成には平衡上不利になるが、触媒表面上に炭素質が沈着するのを防いで、長期間触媒活性を維持させるためである。触媒には、水素化‐脱水素機能を有する金属と、異性化機能を有する固体酸を組み合わせた白金担持アルミナなどの二元機能触媒が用いられている。1967年以来、金属触媒として白金にレニウムを加え、白金がアルミナ上に微粒子としてよく分散し、効率よく触媒として働くように改良したバイメタリック触媒が、1970年代以降はさらにスズなどを加えたマルチメタリック触媒が用いられ、またアルミナの酸性を助長するために微量のハロゲン(通常は塩素)が添加されている。反応器は、1970年代以来固定床式から触媒の連続再生が可能な移動床式へと進化した。これにより触媒の寿命が短くても許容されることから、原料油に加える水素の割合を従来の半分以下にすることができ、平衡論的に有利となることから、生成する芳香族の割合を増やすことが可能になった。
ガソリン製造用接触改質法では、日本では2000年(平成12)よりガソリン中のベンゼンの含有率が1%以下に制限されたため、原料ナフサ中からC6留分(炭素数6の炭化水素が示す沸点範囲の留出油)以下を除いている。生成油のオクタン価は、反応条件により変化するが、通常はリサーチ法オクタン価が100程度になるように調節される。石油化学用プロセスでは、C6留分を含むナフサを原料とし、反応条件をより過酷にすることにより、生成油中に含まれる芳香族炭化水素の割合をより高く(60重量%以上にすることも可能)している。この場合生成する芳香族中では、通常キシレンがもっとも多く、ついでトルエン、ベンゼンの順である。
[八嶋建明]