直留重質ナフサなどを原料として,高オクタン価ガソリンあるいは化学原料としてのベンゼン,トルエン,キシレンなどの芳香族炭化水素を生産する目的で行われるプロセスをいう。この反応は固体酸を担体とした白金系触媒を用い,水素加圧下で行われる。
原油を常圧蒸留して得られる直留重質ナフサ(沸点約80~180℃)は多くの場合,オクタン価が低く,芳香族含有量も少ない。しかしその主成分であるパラフィンあるいはシクロパラフィンを次のような反応によって芳香族炭化水素に変換(改質)することができる。
実際の接触改質プロセスでは上記のほかに次のような化学変化も同時におこり,オクタン価の向上に役立っている。すなわち,
この反応は触媒の存在下に約500℃の高温下で行われるので,原料炭化水素が分解して炭素状の析出物が触媒表面に蓄積され,触媒の活性が急激に低下(失活)する可能性がある。これを防止するために,高圧の水素を原料ナフサの5~6倍(モル基準)も加えて反応が行われている。
最初に工業化された接触改質法はハイドロフォーミングhydroforming法といい,アルミナを担体とする酸化モリブデンを触媒として,450~550℃,10~20気圧の条件で行われたが,触媒の炭素析出による失活が防ぎきれず,頻繁に触媒再生(空気を吹き込み炭素状析出物を燃焼,除去する)が必要であった。やがて1949年にプラットフォーミングplatforming法が開発され,酸性のアルミナに白金を高度に分散担持させた触媒が開発された。この触媒は炭素析出による失活が少なく,再生操作は半年~1年に1度ですむようになった。反応条件は460~520℃,50気圧であった。その後,67年にレニフォーミングrheniforming法が発明された。この方法は白金のほかにレニウムを少量添加することにより,低い水素分圧(10~20気圧)のもとでも触媒活性が低下することがほとんどないので,水素化分解反応が抑制され,接触改質ガソリンの収率が向上し,また装置の建設費や運転費が節減できるという一石二鳥の効果がある。この成功に刺激されて,現在は白金のほかに,いろいろな貴金属その他を添加したバイメタリックないしマルチメタリック触媒が用いられるようになった。
接触改質法の成績の一例を表に示す。
執筆者:冨永 博夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
リホーミングともいう.もともと低オクタン価の重質ナフサを触媒の作用により高オクタン価ガソリンに転化させる操作をいうが,主反応がシクロアルカンの脱水素による芳香族の生成であることから,石油化学工業原料のBTX(ベンゼン,トルエン,キシレン)の製造にも使われる.接触改質によって得られるガソリンを改質ガソリンまたはリホーメートといい,わが国の市販ガソリンの大きな部分を占めている.工業的にきわめて多くの方式が実施されているが,基本的にはハロゲン(おもに塩素)を添加した白金-アルミナ触媒を用いている.近年,PtにRe,Snなどの金属を加えた二元金属触媒をおもに使用するようになった.反応方式も固定層式から触媒を連続的に再生できる移動層式へと変化している.これらの各方式では,重質ナフサを水素化精製した後,4~15 kg cm-2 の水素加圧下,500 ℃ 前後の温度において触媒上で反応させる.主反応はシクロアルカンの脱水素による芳香族化とアルカンの水素化分解で,低級化したアルカンの異性化,環化脱水素(芳香族化)などの反応もある程度起こる.生成ガソリンは芳香族含有量が多く,オクタン価約90以上となる.また,石油化学工業原料のBTXの製造では,リホーメートを溶剤抽出後精留して高純度の製品を得ている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…また,石油ナフサを水素の存在下に,白金と酸性アルミナから成る触媒上で,約500℃,15~50気圧の条件下で反応させると,オクタン価の高いガソリンが得られる。これを接触改質と呼ぶ。この方法では,オクタン価の低いn‐パラフィンがオクタン価の高いイソパラフィンに異性化する反応,またn‐パラフィンが環化,脱水素して,やはりオクタン価の高い芳香族炭化水素を生成する反応が起こる。…
※「接触改質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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