ある者(担保者)が他の者(被担保者)に対して,一定の事項または一定の事業につき,その者が受けるかもしれない損害を塡補(てんぽ)することを約束する契約。たとえば,AがB主催の演奏会を後援し,Bに損失が生じたらAがこれを塡補することを約束するとか,BがCを雇用するにあたって,CのためBがこうむるかもしれない損害をAが担保することを約束する(身元引受け)などの契約をいう。このように,損害担保契約の中には,主たる債務者にあたる者が具体的に特定されない場合(前者の例)と,それが具体的に定まっていて(後者の例)保証に類似するものとがある。しかし,いずれにせよ,損害担保契約は,保証とは違って,主たる債務の存在を要件とせず,担保者は債権者(被担保者)に対して独立の塡補責任を負う。つまり,付従性を有していない。たとえば,前に掲げた身元保証の例でいえば,Cが病気などその責めに帰すことのできない事由でBに損害をかけた場合,Cは債務を負わないが,担保者であるAはBの損害を塡補する責任を負う。また,損害担保契約の担保者は〈催告の抗弁権〉や〈検索の抗弁権〉を有していない(抗弁権)。つまり,補充性を有していない。たとえば,前の例では,担保者Aは,まずCに履行を催告せよとか,Cの財産に執行せよとか抗弁することができないわけである。
執筆者:淡路 剛久
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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[法律的性質]
BがA会社の金を使い込んだとか,第三者をはねてA会社に損害賠償責任を負わせたなどの場合には,BはA会社に対して損害賠償責任を負っており(不法行為責任または債務不履行責任),これ(主たる債務)をCが担保しているのであるから,その性質は一種の保証債務(将来債務の保証または根(ね)保証)である。これに対して,Bの病気によってA会社がこうむった損害をCが塡補すべき場合は,主たる債務が存在しないから,一種の損害担保契約である。これを身元引受けなどと呼んでいる。…
※「損害担保契約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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