放射平衡(読み)ホウシャヘイコウ

化学辞典 第2版「放射平衡」の解説

放射平衡
ホウシャヘイコウ
radiation equilibrium

放射能平衡ともいう.親核種Aの崩壊で生じる娘核種Bがさらに崩壊している場合に,娘核種の生成と崩壊が釣り合って定常状態になることを放射平衡にあるという.放射平衡は,親核種の半減期 τA と娘核種の半減期 τB の大きさの違いにより,過渡平衡と永続平衡に分けられる.Aの原子数を NA,Bの原子数を NB崩壊定数をそれぞれ λAλB とすれば,次式が成立する.

t = 0においてはAのみが存在し,その原子数を NA0 として二つの微分方程式を解けば,

 NANA0eλAt (3) 

となる.τAτB のとき λAλB,十分に時間が経過するときは式(4)の第2項は無視できるので,式(4)は近似的に

となる.したがって,このときのAとBの原子数の比は一定になる.また,そのときのAとBの放射能比は次式で表される.

このような状態を過渡平衡という.また,τAτB のとき λAλB,十分に時間が経過すると式(4)は次のように近似される.

このときの放射能比は,

となる.すなわち,AとBの放射能比は等しくなる.この状態を永続平衡という.ちなみに,τAτB のときには放射平衡は成立しない.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「放射平衡」の解説

放射平衡
ほうしゃへいこう

(1) radiative equilibrium 電磁波粒子線 (放射線) を放出吸収する物体を壁で囲む。ただし,この壁は放射線を完全に反射するものとする。十分時間がたてば,この系は1つの熱平衡の状態になり,系の中のすべての物体の温度は同じになる。この状態では,問題とする物体の放出と吸収とが釣合い,したがって熱放射の状況も定常的になる。このような状態を放射平衡という。 (2) radiation equilibrium ある物体または空間が外部との間に放射エネルギーを交換しているとき,全体として放射エネルギー流入量と流出量が等しい状態をいう。 (3) radioactive equilibriumある放射性核種の単位時間あたりの生成数と崩壊数とが等しい状態をいう。放射能平衡ともいう。放射性核種の生成はウラン系列トリウム系列などの放射能崩壊系列途中でも,また外部から入射した粒子による核反応によっても起る。

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デジタル大辞泉「放射平衡」の解説

ほうしゃ‐へいこう〔ハウシヤヘイカウ〕【放射平衡】

ある物体において、放射によるエネルギーの流出と流入とが釣り合っている状態。輻射平衡
放射性元素の崩壊の系列で、新しく生じる核種の生成速度と消滅速度とが釣り合っていること。放射能平衡。

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世界大百科事典 第2版「放射平衡」の解説

ほうしゃへいこう【放射平衡】

(1)外界と熱的に絶縁された空洞において,その中の物体と放射の間に熱平衡が成り立っている状態をいう(radiative equilibrium)。熱放射(2)物体の単位体積に外から流入する光,X線などすべての電磁波と,外へ出て行くすべての電磁波とを較し,それぞれのエネルギーの総量等しいような状態,つまり出入りが平衡している状態をいう(radiative equilibriumまたはradiation equilibrium)。

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世界大百科事典内の放射平衡の言及

【熱放射】より

…これが量子力学への出発点となった。 なお,放射平衡とは,外界と熱的に絶縁された空洞(中に物体があればそれも含めて)が,中の放射と熱平衡に達した状態をいい,空洞放射もその一例である。この状態で物体は(空洞の壁も)すべて同じ温度となり,放射エネルギーを吸収しただけ放出して収支をつりあわせている。…

※「放射平衡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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