熱放射(読み)ねつほうしゃ(英語表記)thermal radiation

  • heat radiation, thermal radiation
  • ねつほうしゃ ‥ハウシャ
  • ねつほうしゃ〔ハウシヤ〕
  • 熱放射 thermal radiation

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

熱輻射ともいう。熱せられた物体から内部エネルギー電磁波の形で周囲に放出される現象熱放射線は,周囲の物体に吸収されると内部エネルギーに変りが伝わったことになる。熱放射線の中に含まれている種々の波長の電磁波の割合,すなわち熱放射のスペクトル分布は物体やまわりの状態にも関係するが,主として温度によって決定される。熱放射のスペクトル分布の研究から量子論が生れた。

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百科事典マイペディアの解説

温度放射,熱輻射,温度輻射とも。物体を構成する原子の集団が熱によって励起された結果,電磁波を放射する現象,あるいはその電磁波をいう。放射のエネルギーとスペクトル分布は物体の種類と温度だけできまり,温度が高いほど波長の短い放射が強く放出される。熱伝導対流とともに熱の伝わり方の一つ。→黒体放射
→関連項目空洞放射シュテファン熱伝達白熱放射放射高温計ルミネセンス連続スペクトル

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世界大百科事典 第2版の解説

熱輻射ともいう。熱せられた物体から出る電磁波のこと。熱線ないし赤外線はその一部である。物理学の術語としては,あたえられた温度の黒体(それに当たる電磁波を波長によらず完全に吸収してしまう理想物体)と熱平衡にある電磁波と定義され,黒体放射とも呼ばれる。実際上は,閉じた容器(空洞)の壁を一定の温度まで熱したとき,平衡状態でその中に満ちる電磁波として実現されるので,空洞放射ともいう。そのとき空洞中につるした温度計は,空洞に物質を満たして壁を熱したときと同じ(そして壁に接触している温度計とも同じ)温度を示すはずであって,このことは壁をつくる材料にもよらず(キルヒホフの法則),空洞の形にも大きさにもよらない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

物体は外から当たった電磁波を反射・吸収・透過するほかに、自ら外へ向かって電磁波の形でエネルギーを放出する。それは温度が高いほど著しいので、熱放射または温度放射とよばれる。熱輻射(ねつふくしゃ)ということもある。熱放射は、固体や液体を形成する多数の原子や分子の細かく不規則な運動(熱運動)によってつくられる電磁波で、広い振動数領域にわたる連続スペクトルをもつ。単位面積から単位時間に出る放射のエネルギーとその振動数分布(あるいは波長分布)は表面の性質と温度で決まる。熱放射の標準になるのは黒体の出す放射で、それはプランクの放射公式に従う分布をし、すべての振動数について総計した全放射量はシュテファン‐ボルツマンの法則に従って絶対温度の4乗に比例し、また、エネルギーの波長分布が最大になる波長は絶対温度に逆比例する(ウィーンの変位則)。つまり温度が高くなるほど波長の短い電磁波を多量に出すようになる。黒体以外でもこの傾向は同じで、温度を上げるとまず赤外線(ほてりとして感じる)の放出が増え、さらに上げると赤色光を出すようになり(赤熱)、もっと高温にすると短波長の光なども出すようになるので白熱状態になる。

 放射によってエネルギーは一物体から他へ伝わるが、このやりとりの大部分は、物体をつくる原子・分子の不規則な運動(熱運動)がもつエネルギーの授受になるので、放射は伝導および対流と並ぶ熱の伝達の一つの形とみなされる。それは2物体の中間に他の媒体の存在を必要としないという特徴をもつ。太陽からくる莫大(ばくだい)な量のエネルギーは、熱放射として地球に到達するが、その振動数分布は絶対温度で6000Kの黒体放射に近いので、太陽表面の温度は6000Kと推定される。地球表面もそれとほぼ同量のエネルギーを熱放射として宇宙空間に放出して平衡を保っているが、出すのは主として赤外線である。したがって、波長の短い可視光や紫外線を波長の長い赤外線に変える過程で、太陽エネルギーを利用していることになる。白熱電灯では、フィラメントから出る熱放射を照明に利用するが、照明には役だたない赤外線が多量に出るので、エネルギー的にむだが多い。蛍の光やそれにあやかろうとした蛍光灯では、なるべく可視光だけを出すように、熱放射とは異なる発光の仕組みが利用されている。

[小出昭一郎]


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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 熱の移動の一形式。物体内部のイオンや電子の熱運動によって電磁波が放射される現象。室温ではどんな物体も多少の赤外線を放射しているが、高温になるとそのほかに光や紫外線も出すようになる。熱輻射。

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化学辞典 第2版の解説

物体表面の分子または原子は,その温度に応じて励起された状態にあり,この状態から低いエネルギー状態に戻るときに,波長の連続する熱放射線,すなわち可視光線~赤外線を発散する.この現象が熱放射であって,熱放射線のスペクトル分布は,低温では波長の長い赤外部に最強部を有し,高温になるに従って最強部が近赤外部から可視部へと移行する(プランクの放射法則).熱放射エネルギーの総和は絶対温度の4乗に比例する(シュテファン-ボルツマンの法則)ので,高温伝熱では,伝導,対流による伝熱以上に重要である.高温物体は,この熱放射によって,空間を隔てたほかの物体に熱量を与えることができる.固体表面から放射される熱量は,温度だけでなく,固体の種類によっても異なる.投射された熱放射線をことごとく吸収する理想的な物体を仮定し,黒体とよぶ.同じ温度では,黒体からの熱放射量がもっとも多く,ある物体からの熱放射量と,その温度における黒体からの熱放射量との比を,その物体の黒度とよんでいる.無色の液体は可視線を透過するが,ある波長以上の赤外線を吸収するので,液体も赤外線を放射する.気体のうち,H2,O2,N2 などの二原子分子の気体は,熱放射線を吸収する波長域をもっていないが,CO2,H2O,NH3,CH4など三原子以上の気体分子は,赤外域にそれぞれ特有な吸収帯を数多くもっているので,温室効果ガスとして地球温暖化問題の重要な物質である.[別用語参照]放射伝熱

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世界大百科事典内の熱放射の言及

【伝熱】より

…また熱という概念は,熱力学の第1法則が示すようにエネルギーの一形態であり,温度の高低のみによって移動する物理量である。 熱の移動の基本形態は,熱伝導と熱放射であり,そのときの熱の移動にとくに注目するとき,それぞれ伝導伝熱,放射伝熱という。 (1)熱伝導は,液体,気体,固体をとわず発生する熱エネルギーの移動形態である。…

【熱】より

… 乱雑な熱運動をしている原子は光子,すなわち電磁波の量子を放出するため,一般に物体は表面から放射を放出したり吸収したりする。これが(3)であり,熱放射と呼ぶ。その強さは黒い物体の場合表面の温度の4乗に比例する。…

※「熱放射」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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